先週は、感情や想像したことが言葉の「響き」に表れると書きましたが、その響きは「腰」からくるものだと私は信じています。
悲しくて嗚咽(おえつ)する時は腰から背中が震え、おなかの底から笑い過ぎると背筋の下のほうも痛くなる。そんな風に、奥深いところで感情の影響をいちばん受けているのが腰ではないでしょうか。日本語にも「腰を据える」や「逃げ腰」といった、心の状態を腰で表現する言葉があり、古くから日本人は「腰を通して伝わる感性」を感じ取っていたのだと思います。
私が腰を意識し始めるようになったのは、今のボイストレーナーの先生と出会ってからです。同時に、歌に対する考え方や取り組み方が変わりました。
レッスンは、呼吸をすることから始まります。正しい場所に息を入れ、長めに吐きます。正しい場所とは腰の内部、尾てい骨のあたり。下腹をキュッとしめたまま上半身をストンと腰にのせ、息を真っすぐ尾てい骨のあたりまで入れます。「息を腰に入れる」とは、もちろんイメージの世界。でもそのイメージ一つで、背骨の一つひとつが天に向かって伸びて自由になったような感覚になります。そうすると、音の響きに想(おも)いをのせてくれるように感じるのです。想像したことを腰が具現化している、とでも言いましょうか。
その状態にもっていくのに必要なのが「イメージ筋」。先生と私の間で使う言葉です。意識的にコントロールするのは難しいけれど、はっきりと頭に描くことで身体が反応してくれます。イメージと身体が一体化する瞬間です。
正しい場所に息が入ったかどうか、先生にはいつも不思議とわかってしまいます。「あなたが想像したことが筋肉の動きとして表れているので察知できる」のだそうです。「想像したことがちゃんと第三者に伝わっているっていうこと」と言ってもらえた時、自分の身体の持つ可能性が広がった気がして、勇気づけられるのでした。