中学の時、私はマイケル・ジャクソンに夢中でした。ビデオを見て振りをコピーしては、学校で披露していました。彼の歌や踊りにはエネルギーの爆発を感じます。亡くなった今も「この人が地球にいないはずない」と心のどこかで思ってしまう。私も影響を受けた1人でした。
ダンスを習いたかったけれど、親にはその気持ちをひた隠しにしていました。なぜなら、踊りはその人の身体だけではなく人そのものが剥(む)き出しになると、本能的に感じていたから。家族に生の自分を見せるのが恥ずかしかったのだと思います。
様々な踊りを見るにつれ、そこには別世界があることを知りました。尊敬する舞踊家、勅使川原三郎さんの、「無限」に近づくような踊りが一例です。さらには、03年の公演「Luminous(ルミナス)」で観(み)た全盲のダンサー、スチュアート・ジャクソンさん。彼のダンスは飛んだり跳ねたり全身をめちゃくちゃに動かしたり、いわゆる振り付けのあるダンスとは全く違いました。でも、それを観た時に圧倒され、私の身体も自然に反応して涙が出てしまったのです。
彼は「まっさら」でした。見えない世界の中で、何かを表現しようとしているのではなく、音楽にも合わせず、誰にも合わせず、ただその身体を空間に投げ出しているという感覚です。
踊りには、生の人間性が剥き出しになるという以上の、人間がその人自身の身体を「超えていく」瞬間があります。その状態はトランスともいえるし、自己を完全に脱ぎ去った状態とも言えるかもしれません。そんな踊りを目にすると、心が震え、恐怖にも似た感動を覚え、鳥肌がたちます。
理性を超えた力が私たちの身体の奥に眠っていて、その人がエゴや理性を脱ぎ捨てて「まっさら」になった時、本当の姿を現すのではないかと思います。そんな誰にもコントロールできない「美」の一瞬に、私は深い感動を覚えるのです。