味の素が、社名の元となった調味料の発売100周年を記念して、マーク・ニューソンのデザインで50グラム瓶を新発売する。その名も「味の素マーク瓶」。宇宙船アポロの司令船のような形の瓶だ。
円、楕円(だえん)、流線形。世界的なプロダクト・デザイナーの彼らしさを支えているのは、そんな曲線だ。普遍的な形なのに、マークはそれを自分の代名詞にしてみせた。
auの携帯電話「talby(タルビー)」をデザインした人と言えばわかるだろうか。家具から腕時計、今では飛行機までデザインしている。
オーストラリアに生まれ、シドニーの大学で宝飾と彫刻を学び、1987年、デザイナーとしての仕事を日本で始めた。おかげでマークと僕は知り合った。日産自動車から「PAO(パオ)」が、サントリーからビール「ジアス」が出て、僕も時代と楽しんでいた頃だ。
最初に会った時に感じたのは、なんて前向きな青年なんだろうということ。制限はどこにもなく、なんでもやってみたいという気持ちにあふれていた。やがて彼は自分の会社をおこした。それもパリで。やがてロンドンで。
僕とマークは2000年に米国ナイキ本社で行われた催しで再び出会った。ナイキのデザイン部門の人々の前でデザインについて語り合った。その時の彼の言葉が印象的だった。「迷ってないで、さっさと作ってみるんです。今の若い人はよく迷ってしまうようですが、思いついたらすぐに自分で作ってみればいいじゃないですか」
確かに彼は、常に提案することで自分のスタイルを作ってきた。彼を一躍有名にしたロッキード・ラウンジもマークが自分の家のベッドルームでアルミからたたき出して作ったもの。本当に作りたいと思ったら作ればいい。そのいすは誰もが認める彼の形となった。
やがてこの線が洗練され、円や流線形が彼の代名詞になる。そして今、マークは次の段階に入っているようだ。もうどんな線でも使っていいんだという自由に彼は飛び込んだ。