フランスで修業していた頃、たまたま時間が空いたので、パリのオランジュリー美術館を訪ねました。本でしか見たことのなかったモネの「睡蓮(すいれん)」が壁一面に飾られていて、そのスケールと作品の醸し出す雰囲気に圧倒されました。それまでそれほど気にも留めていなかったのですが、実物を前にして世界が認めるとはこういうことなのかと、肌で感じたのを覚えています。
描かれたモチーフが画家にとってどういう意味をもっていたのか、どうしてこの色を選んだのか。私が絵画を見るときは、そのプロセスに興味が向かいます。そしてそれ以前に、どうしてこの画家は絵を描こうと思ったのか。キャプションや図録からは知りえない画家の背景にまで思いをはせながら、作品と向き合います。
3年前、故郷の能登・七尾市に美術館を建て、自分のあめ細工の作品を展示することになりました。モネやダリの作品を見たときのように、見に来た子どもたちが自分の作品を通して様々なことに思いを巡らせてもらえるものを作りたいと思いました。
小さいころに遊んだ能登の海は、私の原点です。夏になると真っ先に潜ってとった白いサザエや、海面から光が差し込み、光のプリズムとなって照らしだす様子を表現した「海の中の銀河」。あめ細工で表現したかったのは、毎日のように見ていた故郷の光景です。七尾湾に沈む夕日が鏡のように水面をキラキラと照らし、そのさまにいつも心を奪われていました。
水と砂糖、水と塩。あめ細工も海もさほど変わらない要素から成っていて、どちらも光を受けると別世界を生み出します。美術館ではLEDライトをあて、海底に光が差し込んだときの幻想的な空気を演出しました。
「何げない田舎の風景の中にでさえ美はあるのだ」ということを子どもたちに知ってもらいたいのです。自分のルーツを大切にする心を伝えることこそ、我が人生の使命だと感じています。