初めての洋菓子店「モンサンクレール」を東京・自由が丘にオープンしたのが11年前。「同じ店は出さない」を信念にし、常に最初の店を意識してきました。次に出したのが、クリームやスポンジ生地などの基本レシピをすべて変えたロールケーキ専門店「自由が丘ロール屋」。次いで六本木ヒルズに開いたのは、大人の“ショコラな空間”を提案した「ル ショコラ ドゥ アッシュ」と新感覚の和スイーツ専門店「和楽紅屋」。石川県七尾市の和菓子屋「紅屋」の長男として生を受けたことが、スイーツの道を歩むこととなったすべての理由と言えます。
子どものころから厨房(ちゅうぼう)の上に住み、階下で菓子作りに励む職人たちの息吹や素材の香り、音を子守唄(うた)のように聞いていました。出来たてのおまんじゅうをほおばり、そのむせ返るようなおいしさを全身で感じて過ごしました。
小学3年生のとき、友人のバースデーパーティーで生クリームのショートケーキを初めて口にし、日本一の和菓子職人ではなく日本一のパティシエを目指す少年となってしまいましたが、大いなる夢に向かって一直線でした。授業中も将来の店の設計図やケーキをデザインし、父の横でディスプレイを手伝いながら「自分の代になったらすべて一新したい!」なんてことも考えていました。
ブランドのロゴデザインやパッケージは、すべて私が手がけています。修業先の南仏の漁師町をイメージし、さんさんと降り注ぐ太陽をモチーフにしたモンサンクレール、クルクルと渦巻くロールケーキ柄……。
一つ一つのコンセプトにロゴがあって、そこから統一した世界が広がってこそ、弟子たちに私のエスプリを伝え、お客様にも一貫した考えを伝えることができると考えています。これからも一生お菓子を創(つく)り続け、独自の菓子道を築いていきたいと思っています。
◇10月は国立西洋美術館館長の青柳正規さんによる執筆です。