僕は幼少の頃から生き物が好きで、将来は生き物にかかわる仕事をしたいと思っていました。本当ならフィールドで野生動物の研究をしていたはずなのに、今は全く逆の、部屋に閉じこもってフィギュアの原型作りの仕事をしております。ただ、自分としては、「これも立派な生き物にかかわる仕事」だと思っていますが。
造形の仕事に就く1988年ごろまで、図鑑や絵本の図版などを描いていました。一方で、生き物好きの仲間と動物の絵を刷ったTシャツを作っていました。当時は野生動物を模したグッズが手に入らなかったので、動物をモチーフとした作品やグッズを作りたいという気持ちが強かったのだと思います。模型会社の海洋堂は、僕が入る前から恐竜の造形物を精力的に作っていました。「恐竜がアリなら現生動物もアリなのでは?」と思い、門をたたいたわけです。
僕たちのつくるモノは、大手メーカーのプラモデルに対して「ガレージキット」と呼ばれていました。精巧で組み立てが難しく、少量生産・高価格のガレージキットは、ユーザーが限られていました。しかも彼らの興味の中心はマンガやアニメのキャラクター物で、恐竜を含めた動物系、いわゆるネイチャー系は最初から相当の苦戦を強いられました。
そんなとき、漫画家で恐竜研究家のヒサクニヒコさんの言った一言が励みになりました。「ガレージキットというのは原型を複製して売る……いわば立体の版画みたいなものだね」。僕のつくる原型は、版画でいう原画にあたります。原型を元に型をつくり、その型に樹脂を流し込んで複製、すなわちガレージキットをつくる、というわけです。僕は自分を現代の浮世絵師に置き換えて、「いつか作品を世に問うことができるのでは……」と思い続けていました。