新大阪駅に到着するといつも気分が高揚する。ホームに帰って来たというか、会社員や劇団員だった頃が甦(よみがえ)る。でも、この日は違う意味で気持ちがいっぱいいっぱい。
今月5日公開「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の宣伝キャンペーン。20社以上!の記者たちの取材攻勢が待ちかまえている。
いつもと違う、台本のない仕事。
取材がスタート。役どころは? 共演者さんは? 現場の雰囲気は? 入れ代わり立ち代わり、記者たちが様々な思惑を持って攻めてくる。僕も何とか面白く紹介してもらおうと応戦。最初はしどろもどろで覚束(おぼつか)ない回答も、数をこなすとそれなりに整理されてくるものだ。
で、問題はここから。
周りの目が気になってくる。ずっと同席している仲間のスタッフの目! 「また同じこと言うとるわ」「もっと他にエピソードはないんかい」視線が語っている。そう聞こえるのだ、僕には。
新しい気の利いたことを言わねば。また焦ってくる。振り出しだ。
「映画の見どころは?」と記者。「そろそろ、おもろいこと言わんかい!」とスタッフの目。観客を楽しませるのが役者の仕事。期待に応えなければ。
「見どころは駐在さんのもみあげです。ぜひ、そこに注目してください!」
記者の優しく小さな笑い。スタッフは静かに無表情に僕を見つめる。
セリフとの格闘に追われる生活の中、台本のない仕事はつくづく難しいと感じる。
始まったばかりのこの連載。スタッフの皆さま、何より読者の皆さま、どうぞ温かい目で見守ってください。
あらためて告知を。映画の見どころは、駐在さんと高校生たちのひと夏の熱い絆(きずな)ともみあげ……。
劇場でお待ちしております。
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佐々木蔵之介 68年生まれ。京都市出身。学生時代に劇団「惑星ピスタチオ」旗揚げに参加。4月15日から始まるドラマ「絶対彼氏」(フジ系)に出演。
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