大学生の夏休みに、演劇サークルの仲間と「選挙応援のアルバイト」をやった。女子は選挙カーのアナウンス係、男子はウサギとカメの着ぐるみを着て、候補者と共に遊説するのだ。
子どもたちが集まる公園では、着ぐるみは抱っこ待ちの列ができるほどの人気者だ。「どこから来たん?」と子ども。「マイクロバスに乗って来てん」などと夢のない返しはできないので(しゃべっちゃダメ)、ウサギはお月さまから来たのだよと空を指さす。カメもまねして空を指さす。「おまえはガメラか!」と密(ひそ)やかにつっこみながら、大づくりな笑顔で一緒に写真に映る。
にしても、身長182センチの僕。ウサギになるとその長い耳で2メートルを超えてしまう。巨大ウサちゃんを恐れ、泣き叫ぶ子どもも少なくない。
子どもたちとの交遊は楽しいのだが、炎天下での演説は地獄だ。候補者の横で、ただ黙って立ち続ける。
仲間と着回す頭は野郎たちの汗とたて笛の香りが混じり合い、気を失うほどの異臭が充満する。毛皮の下のTシャツは汗でびちゃびちゃ。パンツもびちゃびちゃ。足裏からはアスファルトの地熱がジリジリと伝わり立ってられない。隣に立つカメの甲羅もとっくに干上がり、今にも口から火を噴きそうだ。意識は朦朧(もうろう)とし、もはや重い頭を支える気力も体力もない。ピンと立った長い耳からは、もう演説の声は聞こえていない。
ウサギにも限界がある。「オマエ、話長いんじゃあー!」と跳び蹴(け)りをお見舞いしてやった――らオモロイやろなあと妄想……。
詳しいことは秘密だが、今、撮影でマスクをつけて空を飛んでいる。カメが火を噴き、ウサギが政治家にドロップキックするくらいに、今度こそは画面で大暴れしたい。
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佐々木蔵之介 68年生まれ。京都市出身。自らプロデュースした舞台「抜け穴の会議室」をDVD化。ドラマ「絶対彼氏」(フジ系)に出演。
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