5月の植木市で買ってきた“四季咲きのマンサク”は、以来生命活動のかけらも見せずに突っ立ち続け、結論から言って購入時にはすでに死んでいたらしい。
また、同様に植木市で入手したマタタビと萩(はぎ)が、ここに来て突如枯れ始めた。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
どちらも数日前までは非常に元気だったのである。それがどうも蒸し暑さにやられ、根を傷めた様子だ。俺(おれ)の水やりのせいだろう。
俺は仕事でてんてこまいになり、自分のベランダの状況を把握しそこなっていたのだ。
例えばある日の昼過ぎ、俺は出かける直前になって表土の乾きに気づき、あわててベランダに水をまいたりした。日差しが強くなる時間帯に水をやれば、当然それは即座に温水化する。根は傷み、やがて葉が枯れるのも当たり前である。
新顔以外の鉢はこういう理不尽な仕打ちに慣れているから、決してへこたることがない。温水だろうが冷水だろうが、ごくごく飲んですくすく育つ。
おかげで、忙しさにかまけている俺は、そのすくすく育つ鉢の方ばかり見てしまい、肝心の新顔に注意を向けなかったのだった。
その罰がつまり突然死である。昨日まで風にそよいで気持ちよさげだった植物が、いきなり葉を落とす。
まさか……と思ってもすでに手遅れである。水を断っても水をやっても、ダメなものはダメ。なんとか残った葉の先は変色し、茎はしなだれ、表土の具合は明らかに他の鉢のそれと違ってくる。とっくに根は死んでいるのだから、すべては後の祭りだ。
転校生たる新顔は、必死の思いで環境の変化に耐えていたのだ。ところが、育てる方の俺はつい指導基準を古参の生徒に合わせてしまい、“イチジク君やローズマリーさんが毎日元気に登校しているから、教室には問題なし”と思い込む。
そして、無視された新入生たちは俺のスパルタ学園から静かに消えてゆく。この夏さえ乗り切れば、彼らは温水をものともしない鈍感な強者になれたのに。
厳しい学園生活にいまだ耐えている植木市組はヒョウタンとゴーヤとウツギ。だが、気をゆるめたら終わりという様子をしている。
そんな中、なぜかニッキだけが快調だ。ニッキ。