好きな植物のことばかり書いていても八方美人的だから、今日は苦手な植物について書いてみたい。
俺(おれ)がどうしても気に入らないのは、「苞(ほう)」のある植物。しかも、それが花にしか見えない植物である。
例えばミズバショウ、あるいはブーゲンビリア、カラー、アンスリウム……。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
いや、言葉に正確性を欠いた。俺はそれら“苞が花にしか見えない”植物が嫌いなのではなく、花としてうっとり楽しんだ後に「これら花に見える部分は実は苞である」などと図鑑に書いてあることが嫌なのだ。
だまされた! と思うあの瞬間、植物学的な知識のなさを公に暴露されたような恥ずかしさが俺を襲う。
考えてみれば、苞は虫をだますために花らしく見せているのである。そういうたかが昆虫風情に対するカムフラージュに、人間たる俺までがだまされているという事実に愕然(がくぜん)とする。その時、俺は虫もしくは虫以下のうすのろに過ぎない。
このやるせない自責の念を、俺は図鑑に対する憎悪に変えて場をやり過ごす。何が苞だ。葉の変化したものだ。やつらが花に見せたいんだから、俺はあくまで花として受け入れるぞ、こん畜生。未来永劫(えいごう)、花だ!
そういうわけで、俺はだまされそうな予感のする植物にあまり手を出さない……はずだったのだが、先月思わず買ってしまった。
まず、花らしき部分が明らかに苞に決まっており、落胆せずにすむと思ったからであり、さらにその植物の名前をことのほか気に入ったからでもあった。
グズマニア。いくら何でもこの名前はすごい。本人がグズで、グズであることをマニアックに追求しているのか、あるいはグズである他人を偏愛せざるを得ないのか。
どちらにせよ、俺はこの植物にならだまされてもいいと思った。パイナップル科だから、鋭い剣のような葉を伸ばしている。その葉の中央に薄い赤色をした花(むろん苞だ)が、幾重にも重なって造花のようである。ほとんど成長しない。なにしろグズだ。
室内に置き、目をやる度に俺は「グズマニア」と心の中で確認する。ユーモラスな響きに頬(ほお)がゆるむ。
俺の苞嫌いを、この鉢が変えそうな気がする。