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2005.2.9(水)更新
 いとうせいこうの自己流園芸ベランダ派

いとうせいこう タイトル

第40回 園芸派自己流ベランダでもOK
 このエッセーの正式タイトルは『自己流園芸ベランダ派』である。さらに正確を期せば『いとうせいこうの自己流園芸ベランダ派』ということになる。だが、いただくお便りの宛名(あてな)が合っていたことはまずない。

 責任はすべて俺(おれ)にある。覚えやすそうに見えて、実はちょっと七面倒なタイトルなのだ。知っている言葉しか連なっていないのに、順番に混同をきたす。

イラスト
題字と季語イラスト・上田みゆき
 最も多いのが、「園芸ベランダ派」である。物事の核心を短く突いた宛名だ。「自己流」などという自意識は無用! と読者に叱(しか)られている気がする。

 次点に「ベランダ園芸」が来るのだが、これはいくらなんでもいささか端的である。というか、任されたものの大きさに俺は震撼(しんかん)せざるを得ない。せめて「ベランダ派」という小さな派閥で細々とやらせていただけないものか。

 惜しいものに「自己流ベランダ園芸」がある。意味は完全に合っている。単語もほぼ全部入っている。ただ順番が違ってしまった。

 何度も言うが、すべて俺の責任なのである。俺のひねり癖がこうした事態を招いているのであって、心優しい読者の皆さんには大変に申し訳がない。文面を読んで俺はいつでも勇気づけられているのである。宛名は違っているけれども。

 さらに惜しいのは「自己流園芸ベランダー派」である。順番は完璧(かんぺき)だ。だが、あと一歩というところで1文字伸びてしまった。ベランダーたる俺の立場を汲(く)むあまり、つい伸びた。

 ……と色々書いてはきたものの、もちろんどんな宛名でもかまわないのだ。

 そうした混乱が俺にはむしろ微笑(ほほえ)ましくうれしいからである。読者がみなあわてているのが手に取るようにわかるのだ。俺が書いたことを読み、急いで何かを書きたくなった。一刻も早く出したくて、宛名なんか二の次になる。

 手紙を書く人は、今咲いている花、今育っている草の今を伝えたい。俺も同じだからよくわかる。そうした今を前にして、正しいタイトルなどどうでもいい。

 何とでも呼んで下さい。忙しかったら、「派」でもOK。俺はその今をやりとり出来れば幸せこの上ありません。あ、こっちの梅は依然として今も順調です。

(2005/2/9)

イラスト いとうせいこう・作家

1961年、東京生まれ。小説など活字のほか、映像、音楽、舞台など幅広い表現活動を展開しており、都会に住みながら主にベランダで植物を楽しむ「ベランダー」としても知られる。


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