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2005.7.13(水)更新
 いとうせいこうの自己流園芸ベランダ派

いとうせいこう タイトル

第61回 新タイプ朝顔か、旧来の朝顔か
 今年は朝顔、夜顔を苗の状態でいち早く買った。

 この夜顔の話や、買ってもいないのに飛び出てきた昼顔の話などはまた今度するとして、今日は朝顔の話を書いておきたい。

イラスト
題字と季語イラスト・上田みゆき
 朝顔は2種類がそれぞれすでに咲き始めている。

 ひとつは植木市でもかなり出回っていた「宿根・種無し・大輪房咲き」という新タイプで、もうひとつが旧来の朝顔である。で、この新タイプが相当にすごい。

 「房咲き」だから、普通の朝顔のようにツルの途中にひとつずつ花を付けるのではなく、分かれて伸びたツルの先で幾つもの蕾(つぼみ)の房を作る。それが「大輪」となって咲く。やたらに派手である。

 おまけに俺(おれ)の買った「ケープタウンブルー」という品種は、まず深い紫色で咲き始め、夕方になるにつれてピンク色に変わって、夜までしぼまない。花の時間も長ければ、変色もするというお得な朝顔なのだ。

 そして「種無し」で「宿根」。もはや朝顔の常識は完全にくつがえされたといっていい。花のあとの種採りがもう面倒だ≠ニ思い始めた俺などには、あまりに都合がよすぎる。

 苗に付いてきた札をよくよく見てみると「イポメア属・ヒルガオ科」と書いてある。朝顔に限りなく似ている昼顔ということか。なんとなく軽くだまされている気もするが、もともと朝顔というものはすべてヒルガオ科なのだった。

 旧来の朝顔の方は、基本が赤で矢車の形に白が入っている。花は小さく、昼過ぎになれば閉じてしまうから、はかなくて頼りない。

 新タイプの朝顔が肉食動物めいたエネルギッシュさを持っているのに比べれば、印象があまりに淡く、か弱く、しかしだからこそ朝顔だと言いたい気持ちにもなる。

 朝露のように知らぬ間に消えてしまうような花。いつちぎれてもおかしくない細さで伸びるツル。そんな淡泊そうな生命が朝顔のひとつの特徴であり、そのくせ夏という残酷な季節に全力で立ち向かうところに、我々は心うたれるのだ。

 ……と、実は俺は毎日自分に言い聞かせ、旧来の朝顔を愛でようと文化的に努力しているのだった。自然に目は派手な新タイプの花にばかり行くからである。

 人間はわかりやすく便利なものを好む。この習性が自分ながら愚かしい。

(2005/7/13)

イラスト いとうせいこう・作家

1961年、東京生まれ。小説など活字のほか、映像、音楽、舞台など幅広い表現活動を展開しており、都会に住みながら主にベランダで植物を楽しむ「ベランダー」としても知られる。


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