真夏の到来を前にして、鉢の位置を変えたり、植え替えをすませたりした。
本格的な夏が来てしまえば、植物に余計な負担をかけるわけにいかない。その上、作業をする俺(おれ)も暑くて苦労だ。だから、やるべきことは梅雨明け後の数日に終えておくべきなのだ。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
というわけで、捨てる鉢をいくつか選び、それをゴソゴソ動かしていると、鉢の下からダンゴムシが2匹這(は)い出てきたのだった。
俺は必死になってやつらの逃げ道を手で囲い、ダンゴ状に丸まったところを慎重に捕獲した。以前、俺はダンゴムシなどに用はない≠ニ書いたことがあるのだが、やつらが土を肥やす可能性があったことに気づき、それ以来再発見を心待ちにしていたのである。
ところが、ダンゴムシはいっこうに現れなかった。もし見つけたら一カ所にまとめて繁殖を狙ってもいいとさえ俺は思っていた。
したがって今回、やつらが同時に複数匹発見されるのは大変にありがたいことなのであった。俺はほくほくしながら、その2匹をシシトウが育つプランターの中に投入したものだ。
現在、シシトウは我がベランダの注目株である。葉に害虫もつかなければ、水やりの過不足にも弱ることがない。そして、小指の先くらいの小さな五弁の白い花を次々に咲かせては、そこに無駄なくシシトウを実らせる。お薦めの植物だ。
収穫しても収穫しても、シシトウはどんどん実る。みるみるうちに長く伸び、太くふくらんで収穫をせがむ。わざと取らずに放っておけば、真っ赤に変色していかにもトウガラシ然とするのがまた面白い。
料理に使うと、これがかなり辛い。夏の食欲不振にはうってつけなのだが、正直ずいぶん食べたので味には飽きてきた。飽きても収穫自体が楽しいから、俺は毎日シシトウを点検する。
調子よく育つ植物に集中的に目をかけるのは、ベランダーの極意である。
ひとつでも世話が楽しみな植物があれば、例えば日差しの厳しいベランダへも我々は素直に出て行ける。
今年の夏、その大任を果たしているのがシシトウである。そのシシトウへの臨時の賞与がつまり、待ちに待って捕まえたダンゴムシ2匹だったのである。