スーパーの奥にあるいつもの園芸コーナーに出かけたら、萩が並んでいた。
秋と来れば萩である。なんといっても小ぶりなあの花がいい。どんなにたくさん咲いていても、暑苦しさを感じさせないのである。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
また木が草の茎めいていて細い。細くて弾力性に富んでいるから、わずかな風にも揺れて涼しい。
うまく出来たもので、萩の葉は木から直接出ていない。細長い葉柄の先にようやく、丸みを帯びた葉が付いている。花も中心の木から離れて点々と咲く。
したがって、萩は全体に風通しよく見える。バラバラに距離を置いた部分の集合が萩という植物で、だからどこか寂しげでもある。
俺(おれ)は秋になると毎年のように萩を買い、必ず枯らしてしまう。だが、どうも懲りない。必ず欲しくなる。
ということで、今年も俺は萩を入手しようと決心した。三つある鉢のうちどれにしようか迷っていると、1匹のハチが飛んできて花から蜜を吸い出した。
虫が選んだ萩なら少しは余計に長持ちするだろうと俺は思い、やつが熱心にしがみついている鉢を手に取った。風流な趣向である。
しかし、風流を貫くには少々の忍耐が必要なのであった。ハチはいっこうに逃げる様子を見せず、いまや俺の物と決まった萩から離れようとしなかったのだ。
そのまま自動ドアを開けてレジに行くのも店に迷惑だった。俺はハチの労働が一段落するのを待つことにした。すると今度は蚊が数匹飛んできて、半ズボン姿の俺のすねを狙い出した。
鉢を持っているから手では蚊を追い払えない。仕方なく右足で左足を蹴(け)り、左足で右足を蹴るという運動を余儀なくされた。ハチはいい気なもので、俺の目の前でチュウチュウ蜜を吸い続けている。刺されてもいやだから、俺は両手を出来る限り伸ばすことにした。
棚に隠れてこちらをじっとうかがっているおばさんと目が合った。おばさんは異様なものでも見るような目つきをしていた。
確かに異様であった。俺は萩を遠ざけて持ったまま立ち尽くし、自分の足を交互に蹴っているのである。
今度の萩は枯れないで欲しいと思う。俺は結局それから5分以上、人々の好奇の目を忍んで足を蹴り続けたからである。その代償は長生きで埋めて欲しい。