世の中的には明けたようで、おめでた気分である。
しかしベランダーは雑煮など食ってぼんやりしているわけにはいかない。植物に正月は関係ないからだ。
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| 題字と季語イラスト・上田みゆき |
連中は今日も水を求めてやまないし、冬には冬の鉢を用意する必要がある。我々はいつでも忙しいのだ。
定番はシクラメン、ポインセチア、そしてグラジオラスや福寿草といった球根系の植物だろうが、前二者は特に女性的で男の園芸家としては買いにくい。
それでも定番は定番だけあって育てやすく、盛りも長いから迷いが生じる。俺(おれ)も昨年末、ガーデンメッセみたいな場所でずいぶんと頭を悩ませた。
花好きの俺からすればポインセチアはあきらめやすい。だが問題はシクラメンで、ご存じの通り花はいくらでも咲く。蕾(つぼみ)がフラミンゴの首のような形で上がってきてやがて色づき、開いた花弁が逆向きにはね上がる姿は生命力にあふれていとおしい。
育成がまた簡単だから、家にひと鉢あるだけで園芸生活はうるおうのである。春が来るまで花とともに暮らすことが出来るのだ。
だが、趣味としてはどうしてもオバサンっぽい。俺は店頭に並ぶシクラメンを前に何度も行きつ戻りつしたものであった。
そこに救いの神があらわれた。俺が見つけたのは、異常に小さいシクラメンだった。鉢はぐい呑み程度しかない。しかし姿形は完全なシクラメンなのである。
普通のミニシクラメンを手に取って並べると、ふたつの鉢は親子のように見えた。これはいい、と俺は思った。フィギュア感覚である。ミニチュア模型を愛するのは男の趣味とも言えるから、その鉢は俺が買ってしかるべきものだった。両方買って家に帰った。
リビングの棚の上にふたつの鉢を乗せ、俺はなめるように眺めた。もともと両方とも小さいのだが、比較の問題でより大きな方が巨大に見え、より小さい方が米粒のように感じられる。その感覚の変化がなんとも面白くて、俺はシクラメンをいつまでも見た。
けれども結論としては、シクラメンが2鉢も増えただけなのであった。オバサンっぽいがゆえに敬遠していた植物を、俺は複数個買ってしまったのである。