|
「ヤマトタケル」
|
|
天へ昇っていくヤマトタケル(市川右近)
|
巨大な白鳥になって大空へ飛んでいくヤマトタケルが愛し、愛された人たちに別れを告げて、生涯を振り返る最後のセリフだ。そして、最大の見せ場宙乗りになる。
東京では10年ぶりの上演となる「ヤマトタケル」は、86年の初演以来演劇界にセンセーションを巻き起こし、歌舞伎に社会的な目を注がせた市川猿之助の「スーパー歌舞伎」の第一弾。
哲学者梅原猛の作で、双子の兄弟が争い兄・大碓命(おおうすのみこと)を殺した小碓命(おうすのみこと)が、熊襲(くまそ)征伐の名目で大和を追われ、ヤマトタケルとなって蝦夷(えぞ)征伐、伊吹山の山神征伐と転戦、故郷大和に思いをはせながら死んでいく物語だ。
以後、「スーパー歌舞伎」は昨年の「新・三国志V 完結編」まで9作品を数えるが、宙乗りや火、水を使ったスペクタクル、華麗な衣装、洋楽の採用のほかに、どの作品にも強いメッセージが込められている。「八犬伝」の「思いは絆(きずな)」、「新・三国志」の「夢見る力」などで、「ヤマトタケル」が「天翔(あまか)ける心」である。
脚本、演出を手がけ、主演してきた猿之助は「人生の啖呵(たんか)のようなセリフが気に入っている」と話す。
それは、若くして父、祖父を失って劇壇の孤児となりながら、孤軍奮闘してきた猿之助の心そのものだったろう。
今回のヤマトタケルはまな弟子の右近と段治郎が交互に演じている。
(八月一日 教宏)
=新橋演舞場 4月24日まで=
◆
「セリフを読む」は今回で終わります。
=2005年3月31日朝日新聞(東京本社版) 夕刊マリオンから
|