asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
池之端 〜 上野・仲町通り

 夏の散歩は水辺の気配がただようところがいい。
 上野には山もあれば水辺もある。山のエリアにはご存じのように美術館、博物館が立ち並び、水辺とはもちろん不忍池である。
 夏の不忍池には、蓮(はす)の葉が生い茂り、その上を風が渡ってゆく。
 不忍池の気配を感じつつ池之端、上野・仲町通りを歩いてみよう。

 上野広小路から上野駅に向かえば、中央通り左側に寄席の鈴本演芸場がある。その隣が福神漬けの酒悦
 鈴本で落語を聞いて酒悦の漬けものか、人気の高級納豆でも買って帰る、とくればちょいとした下町の若(わか)旦那(だん・な)の姿である。

下町から夜の街に変わる夕方、昔ながらの面影を残す堺屋酒店と仲町通りのネオン街
(写真・横田正大)
 鈴本のすぐ先、左に曲がる横丁、そこが仲町通り。この仲町通り、明るいうちと夜とではまったく別の顔になる。
 たとえていえば、昼は人形町あたりの横丁、夜は新宿歌舞伎町だろうか。

 歌舞伎町的客引きなどに無縁ならば、明るいうちに歩くにかぎる。そこにはまだ、古き良き下町の建物や商店が点在しているのだ。

 仲町通りに入って1分も歩けば左側にそばの蓮玉庵(れんぎょくあん)がある。森鴎外も谷崎潤一郎も通った店であり、当代の店主は知る人ぞ知るジャズレコードのコレクター。そばは下町、屈指の味。
 さらに先に歩くと、右側に指し物の京屋があり、守田宝丹薬局がある。宝丹−−明治の人気薬であり、鏑木清方の随筆などにも登場する老舗である。

 そのすぐ隣、いかにもレトロな建物が酒の堺屋。昭和初期のモダニズム建築の面影がうれしい。
 じつは宝丹薬局のビルのペントハウスには隠れ家的なバーでカップルの客が多いPenがあるが、明るいうちなら、堺屋の角を右に曲がって不忍通りに出、通り沿いの櫛(くし)の十三やをのぞき、すぐ隣の鰻(うなぎ)の伊豆栄の、不忍池が見下ろせる席で一休みするのもよい。

 池の端の緑をながめながら迎える夏の夕がいい。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年7月3日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2010 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.