asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
浅草・花街界隈(2)

  浅草−−ふつうの人がこの町を訪れるとしたら、それは散歩というよりは観光だろう。

 ごったがえす仲見世や浅草寺の境内、外国人の姿も多く、日本人もまたJAPAN文化の魅力を満喫することができる。

 
催事にあわせて街も活気づく。植木市の初夏には、浅間神社の玉垣完成を祝う提灯(ちょうちん)が柳通りを飾った
(写真・横田正大)
 しかし、浅草寺の裏手、言問通りを渡った界隈(かいわい)まで足を伸ばせば、これは観光ではなく散歩となる。

 町は急に静かになり、また艶(つや)っぽくなる。当然といえば当然で、言問通り沿いの雷5656会館右手の横丁(柳通り)を2、3分も行けば右手に浅草芸妓(げいぎ)組合見番があるのだ。
 見番、つまり芸者さんのマネジメントセンター。

 ふつうの観光客はここまではたどりつけない。

 このあたりをゆったりと歩いているのは「勝手知ったる者」の特権である。
 その特権を手中にしている人が、見番裏の釜めし・むつみを訪れることができる。板の間に座ぶとんの席に腰を下ろし、多彩な品書きを手にするだけで、なにか快い酩酊(めいてい)感が身に生じてくる。

 そば通を自認する人は、千束通りと柳通りの中間、象潟通りを越えて、大黒屋をめざすのもよい。

 そして帰りがけに、きんつばで有名な徳太楼に寄れれば上出来である。
 ここのきんつばの甘みは妙(たえ)なる塩加減で甘党にはもちろん、お酒のつまみにもなるのでは、と思われるくらいだ。

 この界隈がもっともにぎわうのは、5月と6月末のお富士さん(浅間神社)の植木市と、11月の酉(とり)の市の頃である。

 しかし、なんでもない日の、この花街の、静かでちょっとさびしげな気配も、とても貴重なものと思っている。
 こういう、ディープな界隈の散歩は、初級者にはまず夕方、明るい時間帯をおすすめする。

 灯ともし前の花街を歩こう。  

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年8月7日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2010 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.