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神田神保町(4)すずらん通り

 神保町の魅力を一つ一つ取り上げていったらキリがない。今回でひとまずは切りあげよう、と思いつつ三省堂の前まできた。
 そこでふと、いつもの額縁屋をのぞいてみようと思いたった。名前をすぐに忘れるのだが、そう清泉堂。三省堂の裏、すずらん通りに面している額縁専門店。

おもちゃ箱に飛び込んだ気分で楽しい文房堂。あらゆる空間に雑貨があふれる
(写真・横田正大)

 そういえば、このすずらん通り「ミューズの小径(こみち)」ともいえる。つまり、楽器店や画材屋が多い。

 まず、なんといっても有名なのが文房堂(ぶんぽうどう)。なにせ明治20年、東京美術学校開校と同年の開業である。
 現在の店内は、世界のファンシーグッズやポストカードで一般客をも呼び込んでいるが、本命はもちろん文房具と画材である。
 店内を物色していたら、写生用木製カバンが、バーゲンで売られているのが目にとまった。懐かしくて、ショルダーバッグ代わりにと購入してしまった。

 画材屋の店内は人をロマンチックな気分にさせる。

 さて、額縁の清泉堂。この店も楽しい。大小さまざまなデザインの額が所狭しと並べられている。なぜ人は美しい額縁を見ると幸せな気持ちになるのだろう。
 私はこの店で、昔の雑誌の木版口絵などを額装し、人に贈ることがある。絵と自分で選んだ額やマットの色が、あまりにピタッときまると、人にあげるのが惜しくなってしまう。

 ところで楽器店だが、ここ、すずらん通りにはギターや管楽器を売る店が現在も2軒あるが、いつも立ち止まって店内をのぞきたくなるのが、古いピアノやオルガンが並べられているツルオカピアノである。
 ほの暗い店内の、美しいアンティークなオルガンを見ると、しばらくはぼーっと見惚(みほ)れてしまう。そういえば、この店の前を通ると、よくピアノの調律の音が聞こえたが、ここのところあまり耳にしないが……。

 せいぜい300メートルほどのすずらん通りだが、芸術の香りの残る道である。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年9月25日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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