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連雀町辺り(2)

 神田は淡路町と須田町の一角、元連雀町へ人を案内し、これぞ昔の下町の風景、といった木造建築の魅力を堪能してもらったら、ちょっとフェイントをかけてみるのもおもしろい。

 「洋食を食べましょう」という趣向である。  

新しい店に生まれ変わった松栄亭。たくみに和洋折衷のデザインが取り入れられている
(写真・横田正大)

 神田まつやの向かって左の横丁を1、2分も歩けば、西洋料理の松栄亭がある。
 西洋料理とは銘打つがメニューと味は、懐かしき、由緒正しき、下町の洋食の店である。

 創業が明治40年というのだから、当時としてはずいぶんハイカラな存在だったにちがいない。
 今の店も今年の4月、改築オープンしてとてもオシャレな感じになった。
 しかし店内には金魚鉢なども置いてあり、「町内の洋食屋さん」の姿も残る。

 ありがたいのは、カウンター席のあることで、一人で行って、オムライスとお漬物でサッと昼食を、ということもできる。

 夏目漱石も通った店として知られるが、漱石のあの顔などを思い出しながら、かきあげやメンチカツを食べれば、明治開化気分満点という味付けも加わる。

 松栄亭で食事をした後で、ちょっとお茶でも、というのならば、やはりショパンがお値打ちではないか。
 かんだやぶそばの向かい右側のビルの1階。創業は昭和8年とこちらも古くからの店だが、改築後もステンドグラスの戸棚やテーブルや椅子(いす)に昭和モダニズムの香りが息づいている。
 店内に流れる曲は、もちろんすべてショパン。
 朝8時からの営業というのも、いかにも町に溶け込んだ喫茶店。

 そういえば、淡路町の交差点から昌平橋に至る外堀通り沿い右側に、こちらも昭和初期に洋菓子店となった近江屋洋菓子店がある。
 店内のゆったりとした雰囲気は、下町洋菓子店の殿堂といったたたずまい。

 このレトロモダンなコース、女性をお連れして不評だったためしがない。

→ 元連雀町辺り(3) へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年10月9日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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