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谷中(2) 谷中銀座

 日暮里駅西口近く、夕やけだんだんを下ると、すぐに谷中銀座となるが、その手前にジャズバーシャルマンの看板が見える。
 モダンジャズがブームとなったころだからもう40年近く前からだろうか、日暮里にシャルマンありと、その名を知られた店だ。
 このロケーションといい、古色蒼然(そうぜん)とした店内の雰囲気といい、実にいい感じである。

 時間が60〜70年代で止まったままのよう。

夕方、買い物客でにぎわう谷中銀座
(写真・横田正大)

 が、そんな気持ちを現実に引き戻してくれるのが谷中銀座の活気である。元気な商店街はあったかい。北風が気にならなくなる。

 この谷中銀座、ただ歩いて通り過ぎるだけなら5分もかからない。なのにまあ、なんといろいろな店がギッシリと軒を連ねていることか。

 飴(あめ)屋あり、そば屋あり、書店、江戸民芸店、電器店、靴店、鳥肉店、すし店、和菓子店、鮮魚店、茶舗、酒店、豆腐店、精肉店、花屋、理容店、もちろん洋品店や呉服店、あるいは瀬戸物の店もある。

 日々の生活に必要なものはほとんどこの谷中銀座で間に合ってしまう。
 しかもこの商店街、東京都のモデル商店街ということで、ペイブメントといい店の看板といい、基本デザインが統一されている。やる気を街全体でアピールしている商店街なのだ。
 しかし気取った気配などありえようもなく、通りには揚げたてのコロッケの香りが流れ、洋品店の前では買い物途中のおばさんたちの立ち話がつづく。

 じつは町歩きの楽しみの一つは、もしできれば移り住んでみたい町を、そうともいかないから、訪ね歩くことでもある。

 谷中銀座の庶民的な活気は(引っ越してくるのならこんな町)と人に思わせるものがある。
 しかも、この商店街の左右の横道に入り込めば、くねくねと曲がりくねった、迷路めいた路地が待っているのだ。

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坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2002年12月25日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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