asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
千駄木(2) 団子坂上

 千駄木駅を出て団子坂を上る。この坂、上り始め、すぐに古美術店などはあるものの、とりたてて特別な坂ではない。

 しかし、元「観潮楼」、森鴎外の住居があったところと思うと、坂を上る気持ちがひと味ちがう気がしてくる。

急な階段を上ると鴎外邸跡に出た。今も庭に銀杏(いちょう)の木が残る。書斎から海が見えたという
(写真・横田正大)

 町は、いや、あらゆる場所は物理的、具体的要素で成り立っているように見えるが、実は目に見えぬ、言葉のイメージによっても、影響を大きく受けることを改めて感じる。

 となると、この団子坂、江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」の生まれたエリアでもある。坂の途中か横丁に、バー「D坂」とか「推理小説」なんていう名の店があったらマニアはどんなに喜ぶだろう、などと夢想しているうちに、鴎外記念本郷図書館前につく。

 団子坂、左側に面して入り口があるが、団子坂上信号で左に折れる薮下通りから入ることもできる。薮下通りに立ち左側をながめれば、なるほど昔はここから東京湾の潮の満ち引きも見えたのではなかろうかと「観潮楼」の名の由来もわかるような気がしてくる。
 薮下通りは、鴎外の日々の散歩道というからうれしくなる。

 この図書館には鴎外記念室が併設され、鴎外の遺品や原稿など鴎外関連の資料が展示されている。
 中でも異色の記念品は鴎外がドイツに留学したとき親しくなったエリスによってもたらされたという「R・M」のモノグラムである。
 このモノグラムは、R・M、つまり林太郎(鴎外の本名)・森のイニシャルである。
 そのイニシャルをエリスは刺繍(ししゅう)し、鴎外に贈ったのだろう。愛の遺品なのだ。

 実はこのイニシャルの入った鴎外のペーパーナイフのレプリカがここで入手できたのだが、今は品切れという。プレゼントに最適と思っていたのにちょっと残念。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)



2003年4月2日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2010 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.