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神楽坂(6) 毘沙門天周辺

 神楽坂通りに面して、神楽坂のシンボル・毘沙門天善国寺がある。
 道ゆく人の中には、毘沙門様の前を通るとき、頭を下げてゆく人もいる。生活の中の信仰が今日も生きつづけているのだろう。
 毘沙門様にお参りしたりすると、気分も“古き良き日本人”になったりする。

神楽坂の人たちの厚い信仰に支えられている毘沙門天。お参りする人たちでにぎわう 
(写真・横田正大)

 そういえばこの神楽坂、古き良き物を売るお店が少なくない。思い出すままに紹介してみよう。

 神楽坂上交差点から下ってゆくと、まず、交差点のすぐ近く、山下漆器店がある。お椀(わん)や小さな卓など、ついウインドーをのぞいてみたくなる。

 その数軒先が文具の相馬屋。ここは、すでに紹介した坂下の山田紙店とともにオリジナルの原稿用紙で有名。尾崎紅葉や鏑木清方が愛用したというのだから、どうしても欲しくなる。

 相馬屋の斜め向かいが甘露甘納豆と和菓子の五十鈴。さらに下って毘沙門様の向かいにその名も毘沙門せんべいの福屋がある。

 軒を並べるように、うどん会席の鳥茶屋、茶とのりの楽山、履物の近江屋があり、本多横丁の先、中華まんじゅうの五十番の並びにヴィンテージ・キモノの甚右衛門がある。ウインドーには季節の着物が飾られ、見ているだけで楽しくなる。
 私は、必要もないのにここで帯を買ってしまったことがある。その柄と質感があまりに美しく、値段も驚くほど安かったので。

 ところで、この甚右衛門のビルにさのさの看板が出ている。邦楽の曲のさのさと関連があるかというと、まったく関係がない。
 ひっそりとしたスナックなのだが、なぜか金曜の夜などは、数人の客が勝手にギターを弾いて盛り上がったりする不思議な店だ。

 甚右衛門のはす向かいが帽子のヤマダヤ。さらに下ると草履の助六。花柳界に草履はなくてはならぬもの。

 かくのごとく、神楽坂は“和”の商店街でもある。

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年5月14日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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