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深川(1) 芭蕉庵跡周辺

 なぜか本格的な夏の気配を感じるころとなると、深川あたりを歩きたくなる。

 1人で歩くときは、行きつけの居酒屋を2、3軒はしごをするのが散歩がわりとなるが、人を深川に案内するとなれば、まずは俳聖松尾芭蕉、ゆかりの地へということになる。これが、ちょっとした観光旅行気分になる。

眺めの良い場所に芭蕉像がある。奥の細道の旅は舟で隅田川を上り、千住から陸路を行ったという 
(写真・横田正大)

 都営地下鉄線の森下駅を降りると、芭蕉記念館への道順が示されているので、それに従えばいいが、簡単に言えば、新大橋と清洲橋の中ほど、隅田川沿い。
 いかにも俳人の記念館らしいこぢんまりとしたたたずまいが好ましい。

 ここに芭蕉記念館が建つこととなったのは、大正6年の大津波の後「芭蕉遺愛の石の蛙(かえる)」が出土したので、東京府は、この地を「芭蕉翁古池の跡」と指定したという。
 津波の跡の“芭蕉の蛙”の、その真偽はさておき、この話を受けて東京府のとった処置はなかなか粋なものではないか。

 芭蕉記念館には芭蕉の書簡や短冊など俳諧資料が展示され、館内の和室では句会や研修会が開かれる。
 築山や池を配した小庭園もあり、ここを吟行の場として句作に没頭する姿を見かけることもある。

 この小庭園の築山、奥の出入り口からは隅田川べりに出られる。ここから川沿い左方向に3分ほど歩けば万年橋のたもとの芭蕉稲荷神社そして芭蕉記念館分館に至る。

 芭蕉稲荷には、たしかに石の蛙が足元にうずくまっている。ともかくも、この蛙の顔と背に水をかけてやり、すぐ近くの、隅田川と小名木川に隣接する分館の芭蕉庵史跡展望庭園を訪れる。
 ここには芭蕉の姿をしのぶ像が建てられ、清洲橋を望む隅田川をバックに絶好の記念写真スポットといえる。

 思えば、ここから芭蕉は奥の細道へ旅立ったのだ。

→ 深川(2) 森下の老舗 へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年6月25日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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