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深川(5) 清澄庭園へ

 深川江戸資料館を出るとあらためて、道のケヤキ並木の緑の濃さに気づく。

 この深川江戸資料館への道、深川資料館通りには、寛政の改革の松平定信の墓のある霊巌寺や出世不動の長専院といった寺院があるのに資料館へ先にと思うあまり、通り過ぎてしまった。

 資料館を出てひと休みした後、ゆったりした気持ちで資料館通り界隈(かいわい)を歩いてみる。寺院にお参りしたり、深川丼用のあさりやセールの浴衣の反物などを物色してみたりする。
緑陰の小道を涼しげに歩く、散策の人たち。借景がいいと周辺はマンション建設ブームという 
(写真・横田正大)

 まだ日は高い。さてこれからどちらに向かうか。深川江戸資料館に向かって左方向に戻れば清澄庭園。右方向へ行けば東京都現代美術館へということになる。

 私は、いまだ東京都現代美術館へ至る、好みのルートを発見できないでいる。美術館へのアプローチはできることなら優雅な気分でありたい。でなければ、ついタクシーで、ということになってしまう。

 今回は、夏の清澄庭園の池のまわりの巨石を踏み歩きたくなった。この庭園はなにかとスケールが大きい。江戸時代の大名庭園の面影が今日に残る庭なのである。

 ここは江戸の伝説的豪商“紀文”こと紀国屋文左衛門の別荘地跡を三菱財閥の岩崎弥太郎が買い取り、隅田川の水を引き入れ、全国から奇岩名石を集めて配したという、なんとも豪勢な庭。
 向島百花園のような小体できめの細かい庭園も好ましいが、この清澄庭園のような野放図ともいえるバブリー(?)な日本庭園もなかなか興味ぶかい。
 こういう広大な私園を造ろうとした情熱、執念に途方にくれながら園内をそぞろ歩いていると、現実的な感覚がマヒしてくる。

 庭園を出て再び清澄通りに戻る。仙台堀川の手前の通り沿いに建つレトロな建築群(関東大震災後の防災建築という)をながめながら門前仲町へと向かう。

→ 深川(6) 辰巳新道へ へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年7月23日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
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