asahi-mullion.comのロゴ
トップページ  ■サイトマップ  ■検索ページ

バックナンバー
千束周辺(1) ひさご通りへ

 仲見世と浅草寺だけが浅草と思っている人は、浅草の素顔を知らない。

 伝奇小説の舞台の一景のような、原色の着物屋、骨董(こっとう)店、あるいは舞台衣装屋が軒を並べる伝法院通り
 店先の大鍋からグツグツと湯気を立てるモツの煮込みとホッピーの店で、昼間から気炎を上げる客でにぎわう場外馬券場・JRAウインズ浅草あたり。
 さらにその奥の、いかにも戦後の遊園地といったレトロな雰囲気が、かえっておもしろい浅草花やしき
 この浅草花やしきの向かって左、六区ブロードウェーの突き当たりの先、ちょっと猥雑(わいざつ)な気配もある商店街がひさご通りである。

 なにかの縁あってここに足を踏み入れたか、勝手知ったる地元の人でなければ、観音様からやや遠いこの通りには訪れられないのではなかろうか。
 しかし私は「観光気分」でこの街を楽しむ。
 アーケード内を、いかにも地元風に自転車で行く人の姿を観察したり、ひさご通りに入って右手、塩豆で知られる但馬屋で買い物をする人の表情をうかがったりする。

 但馬屋の手前、角の大きな建物が、有名な牛鍋屋・米久本店。気取ったすき焼きやシャブシャブではなく、ガラス戸と提灯(ちょうちん)の下がる店構えからして「牛鍋」の称号がふさわしい。

文明開化の味がする牛鍋屋。高村光太郎が「智恵子抄」に「米久の晩餐(ばんさん)」と書き残した 
(写真・横田正大)

 店内の廊下や階段は牛鍋の脂がしみ込んだのか、長年、磨き込んだためかピカピカとアメ色に光っている。

 米久の先には、江戸下町伝統工芸館がある。江戸以来の職人の技による製品の展示や、実演も企画される。

 ひさご通りがぶつかる広い道路は言問通り。その手前には、提灯の花藤があり、また「戦後」の雰囲気に満ち満ちた居酒屋やバーが残る。

 ひさご通りから言問通りを渡った先、そこはもう千束通りだ。

 

→ 千束周辺(2) 千束通りへ へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2003年10月29日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から
asahi-mullion.comのトップページへ
asahi-mullion.comトップページへ

このホームページ(asahi-mullion.com)についてのご意見や情報提供は
mullion@asahi.com

朝日新聞のマリオン紙面への掲載や問い合わせなどは
郵便番号104-8011 朝日マリオン21−マリオン編集部
(TEL03-5540-7411 FAX03-3545-0525)
Eメールはmullion@asahi.com

asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2010 Asahi Mullion 21. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.