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お茶の水(1) 湯島聖堂へ

 御茶ノ水の駅は降りても神田駿河台方面ばかりで神田川を越えた湯島側には行かない、という人は多い。
 もったいないな、と思う。すぐそばに、都会の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれる散歩エリアがあるからだ。

 御茶ノ水駅の秋葉原寄り出口を出る。出て左に曲がれば(ひじり)。御影石でできた、つるつるとした欄干などをなでながら聖橋を渡る。
 めざすは湯島聖堂。「そうか聖堂がある近くだから聖橋か」などと独り合点しているうちにすぐに湯島聖堂となる。

 聖堂正門は外堀通りに面しているが、私は聖橋を渡ってすぐ右手の、聖橋門から入るのが好きだ。うっそうとした木立の中、石段を下りてゆく感じが「学僧気分」になれていい。
 階段を下り切ると、すぐ左、入徳門の前となる。さらに杏壇門、その先が広い中庭になっていて奥の正面が大成殿。

境内を歩いていたら、木立の中に巨大な孔子像が現れた 
(写真・横田正大)

 この空間に立つと、建築のスケールといい様式といい、まったく日本ではない。中国なのだ。
 それも当然、湯島聖堂は儒学の祖・孔子様をまつる所なのだから。

 伸び放題といってもいい敷地の中の主な樹木には名札がつけられていてありがたい。その中で「楷(かい)」の木、この木の由来が興味ぶかい。
 和名は「トネリバハゼノキ」、ウルシ科である。孔子の墓所に植えられている名木ということで、別名「孔子木」。聖堂内の数カ所でこの木を見かける。
 この楷、枝ぶりが正しく美しいことから「楷書(かいしょ)」の語源となったという。

 そんな、うんちくもいかにも中国好みと思いながら堂内を行くと、巨大なる孔子銅像と出会う。高さ4.5メートルの孔子様の銅像は世界最大という。
 この銅像を囲む森、シュロが生い茂り、木にはツタがからみつき、まるで亜熱帯のジャングルを思わせて、孔子像との対比が面白い。

→ お茶の水(2) 神田明神へ へ

坂崎 重盛 (エッセイスト・題字も)




2004年4月28日付 朝日新聞(東京本社)「マリオン」から

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