音楽空間広がる商店街
見上げると女性ボーカリストがエキゾチックなオリジナル曲を歌っている。今年20回目を迎える「吉祥寺音楽祭」の期間まで、サンロードのアーケードにある8個の大型プロジェクターには、こんな映像が映し出される。この通りに足を運ぶだけで音楽祭の各会場にいるようなライブハウスの熱気を体感することができそうだ。
同祭はゴールデンウイーク中に開かれるサンロードの代表的イベント。同祭を支援する一人で、「街づくりのためには映画館でできることはなんでもやってきた」と話す本田拓夫さん(61)。サンロードの一角にある「バウスシアター」の支配人だ。同祭期間中には音楽関連映画を上映するなど映画館の立場からかかわってきた。今年は先日亡くなったフォークシンガー、高田渡のドキュメンタリー「タカダワタル的」をレートショー上映する。同シアターは防音設備が整い、演奏も可能。利点を生かし、今年はハイライトであるアマチュアバンド出演の「吉音コンテスト」の会場になる。
音楽祭の期間だけでなく、この通りを歩くと、ふだんから様々なジャンルの音楽が流れてきて訪れる人を楽しませる。昨年できたプロジェクターには夜間、随時映像と共に音楽が流れる。いずれもアレンジしているのは地元の商店街振興組合だ。「夏は盆踊りの曲を流すとか、季節にあった音楽を選んでいます。プロジェクターはみんなが見てくれるようになればいいですね」と小倉正文常任理事。サンロードの近くにはジャズ喫茶やライブハウスも多く、この通りは音楽に満ちている。
秋。シアター並びの月窓寺では恒例の「吉祥寺薪能」がある。通りを歩くことで触れる多様な音楽シーンに伝統芸能や映画文化。地元生まれの古書店の2代目、若松賢さん(56)は「やはり音楽や映画の本が売れます」。ジャズが流れるピアノホール「サムタイム」で働く菊池麻由さんが言う。「仕事帰り、サンロードにジャズが流れる。音楽を志す人も多いこの通りには、多様な音楽を受け入れる土壌があるんでしょうね」
(嶋津智子)