趣味が彩るアキバ文化
アニメやコミックのキャラクターから動物や戦車、話題の愛知万博グッズまで、精巧なミニチュアのフィギュアが店内のガラスケースの中に所狭しと並ぶ。じっと熱心に見入っているのはカップルや家族連れ、子供からお年寄りまで。ここは秋葉原・ラジオ会館内にある「ホビーロビー東京」。模型会社「海洋堂」の直営店だ。
同店店長の嶋田千春さん(32)にとって忘れられないことがある。00年春のことだ。99年に海洋堂が菓子メーカーと共同開発し、売り出したお菓子「チョコエッグ」。おまけにつけた小さな玩具が爆発的にヒットした。メディアに取り上げられ、家族連れらが連日、店に押し寄せた。商品を置いてもたちまち売り切れ、1日の売り上げは100万円を超えた。「店内が原宿のキディランドのようだった。食事をとる暇もなかった」と嶋田さん。現在のフィギュアブームの始まりとされる記念すべき現象だった。いま、中央通りには「リバティー」などフィギュアショップが軒を連ねる。
電気街とはまた違う人の流れを通りに生み出したこのフィギュア人気。秋葉原をよく訪れ、1回の買い物に3万円も使うこともあるという中年男性は「電気街だけの時より楽しくなったね」。
もっとも、この通りが人を引きつけるのはフィギュアだけにとどまらない。アニメやパソコン、ゲーム、コミックなどホビー関連の店がひしめき合う。「ここに来れば欲しい物がみつかる」。多くの人がそう口をそろえる。家電店の前で真剣な表情で新作ゲームを試す若者たち。アイドルの路上イベントにはカメラを構えたファンが群がる。異様なまでの熱気が街を包む。これがアキバのパワーだ。秋葉原に詳しいライターの久保内信行さん(28)は言う。「趣味で成り立っているような不思議な街。一生ここから卒業できなさそう」
駅前は再開発が進み、今夏、常磐新線「つくばエクスプレス」も開通する。新たな人やモノの行き来の中、秋葉原はまた別の顔を見せるかもしれない。
(熊坂麻美)