洋館がはぐくむ文化交流
咲き誇るバラが観光客を魅了する港の見える丘公園内ローズガーデン。突然、園内の洋館・イギリス館からクラシック音楽が流れてきた。館の庭では演奏家数人が「G線上のアリア」などを披露、生演奏を楽しんだバラ見学の観光客らも大きな拍手を送った。
「歴史を生かしたまちづくり要綱」を88年に施行した横浜市は、関東大震災後から昭和初期にかけ建てられた外国人の私邸などを修復、移築。七つの洋館を山手本通り沿いに整備、一般公開している。コンサートは、こうした主な洋館を舞台にアマチュアやプロの演奏家が無料や時に有料で00年から随時開いている。「ぜひ洋館の中で」と希望する音楽家も多く、「大勢の人に楽しんでもらえてうれしい」と七つの洋館を運営する財団法人・横浜市緑の協会の沼田久代さん(55)は満足げに話す。
通り近くにある横浜インターナショナルスクールの校長、ニール・リチャーズさん(52)もコンサートなどの活動に積極的に取り組む一人だ。96年、前任地の南アフリカ共和国から来日した。「通りのためというか地域のために何かをしたい」とエリスマン邸や学校の講堂などでプロの演奏家と生徒たちによる演奏会を開催、自ら司会をする。生徒には地域との交流活動のため、名所の外国人墓地でのガイドの手伝いを勧めている。こうした活動を積み重ね、「国境を越えたいね」と目を輝かせた。
沿道には緑が多く、教会やミッションスクールが点在し、異国情緒が漂う。「ここは人がゆっくり歩いている。故郷に帰ったような気分になり、ほっとする」とリチャーズさんは笑顔を見せた。
各館では「外国との文化交流」をテーマにイベントもしている。昨年で横浜市は仏・リヨンと姉妹都市提携45周年。記念の「横浜フランス月間」に合わせ、今はブルターニュ、ボルドーなどの陶器やワインを室内に飾り、フランス各地のイメージでドレスアップ中だ。
古い洋館群は、この通りで人々の交流の場という新しい役割を担っている。
(牧野祥)