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2005.6.16(木)更新 ストリートストーリー
 
山手本通り  (横浜)

 外国人居留地だったこともあり、教会やミッションスクールの多い横浜の山手本通り。緑の中にたたずむ古い洋館群は、貴重な文化財としてだけでなく、市民の活動の場としても親しまれている。

 
イラスト・橋爪かおり
洋館がはぐくむ文化交流

 咲き誇るバラが観光客を魅了する港の見える丘公園内ローズガーデン。突然、園内の洋館・イギリス館からクラシック音楽が流れてきた。館の庭では演奏家数人が「G線上のアリア」などを披露、生演奏を楽しんだバラ見学の観光客らも大きな拍手を送った。

 「歴史を生かしたまちづくり要綱」を88年に施行した横浜市は、関東大震災後から昭和初期にかけ建てられた外国人の私邸などを修復、移築。七つの洋館を山手本通り沿いに整備、一般公開している。コンサートは、こうした主な洋館を舞台にアマチュアやプロの演奏家が無料や時に有料で00年から随時開いている。「ぜひ洋館の中で」と希望する音楽家も多く、「大勢の人に楽しんでもらえてうれしい」と七つの洋館を運営する財団法人・横浜市緑の協会の沼田久代さん(55)は満足げに話す。

 通り近くにある横浜インターナショナルスクールの校長、ニール・リチャーズさん(52)もコンサートなどの活動に積極的に取り組む一人だ。96年、前任地の南アフリカ共和国から来日した。「通りのためというか地域のために何かをしたい」とエリスマン邸や学校の講堂などでプロの演奏家と生徒たちによる演奏会を開催、自ら司会をする。生徒には地域との交流活動のため、名所の外国人墓地でのガイドの手伝いを勧めている。こうした活動を積み重ね、「国境を越えたいね」と目を輝かせた。

 沿道には緑が多く、教会やミッションスクールが点在し、異国情緒が漂う。「ここは人がゆっくり歩いている。故郷に帰ったような気分になり、ほっとする」とリチャーズさんは笑顔を見せた。

 各館では「外国との文化交流」をテーマにイベントもしている。昨年で横浜市は仏・リヨンと姉妹都市提携45周年。記念の「横浜フランス月間」に合わせ、今はブルターニュ、ボルドーなどの陶器やワインを室内に飾り、フランス各地のイメージでドレスアップ中だ。

 古い洋館群は、この通りで人々の交流の場という新しい役割を担っている。

(牧野祥)

  公開している洋館は7館

 ★横浜市イギリス館 品格のある家具や調度が英国の趣を伝える。
 ★山手111番館 吹き抜けのホールが訪れる客をもてなす。
 ★山手234番館 四つの住戸が左右と上下に対称的に並ぶ造り。1階では7館の総合 案内も。
 ★エリスマン邸 元町公園の自然が一望できる大きな窓が特徴。
 ★ベーリック・ホール アーチ型の窓や花形の小窓のデザインがかわいい。
 ★ブラフ18番館 白地に緑の窓枠が映える外観と、外光がたっぷり入るサンルームが 特徴。
 ★外交官の家 明治時代に建てられた。97年に東京・渋谷から移築。
 ※いずれも午前9時半〜午後5時(7〜8月は6時まで)。休館は第2(水)(イギリス館と山手234番館、外交官の家は第4(水)、(祝)の場合は翌日)。問い合わせはベーリック・ホール(045・663・5685)。みなとみらい線元町・中華街駅から港の見える丘公園まで徒歩約5分。


暮らしを楽しむ山手気質
 荻野アンナさん(作家、慶大教授)
 子供の頃、山手には喫茶店が1軒もなかった。やがて欧米系の住人が減り、住む人を失った洋館はカフェや市の施設となってよみがえった。100年前の山手にあった外国人のペンションで、出されていた料理のレシピが見つかると、再現する会が開かれたりする。そういう暮らしの楽しみ方が山手気質かもしれない。
 ■横浜・山手で生まれ育ち、現在も在住。91年「背負い水」で第105回芥川賞受賞。慶応大で仏文学を教えている。



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