和と洋のバランス絶妙
ベビーカーを押しながら店頭に並ぶ和食器をじっと吟味する青い目の女性、すれ違う板前さんとフランス料理店のスタッフらしき男性……。神楽坂通りにはこんな風景がすっと溶け込む。
明治32年創業のスーパー「神楽坂KIMURAYA」では、ワインやチーズ、ソーセージの種類が多いことに驚く。ワインはなんと200種類、チーズも60種そろう。「そりゃ、外国人のお客さんを意識しているよ」と社長。この西洋の雰囲気をしっかり感じとっているようだ。
夏目漱石や与謝野晶子ら文豪に愛され、かつて花街として栄えた神楽坂界隈(かいわい)に西洋の要素が入り始めたのは、30年ほど前から。在日フランス人学校や東京日仏学院が近くにあったため、駐在員やその家族が多く住むようになっていった。
やがて欧州での修行から戻った日本人シェフや「故郷の味を広めよう」と考えた外国人たちがこの地に店を開くようになったという。電話帳で拾ってみたら、10年前は10軒ほどだった欧州料理店が、現在はこの界隈だけでも30以上ひしめき合っている。
路地に入ると、グレーに塗られた外観に「La Ronde d’Argile(ラ・ロンダジル)」と店名がかけられた一軒家がある。
中には畳も見える。昨年11月、和陶器のセレクトショップを開いた平盛道代さん(38)の店だ。「外国人の集まるバーやレストランが多いのに、昔ながらの豆腐屋や料亭もある。ここは無国籍でありながら『日本』が失われていないと思い、『ここに開こう!』と即決したんです」。仏語の店名を目にし、店内に流すフレンチポップスを聞いては仏語で話しかけてくる外国人客もいる、と平盛さんは笑う。
在日約20年のフランス人講師イブ・ペローさん(45)が言った。「ラーメン屋をのぞくフランス人が居て、ビストロ巡りをする日本人が居る。そんな雰囲気が好きなんだ。『和』と『洋』のバランスが絶妙なんだよね」
(坂本悠子)