知恵絞り、万福お届け
門前仲町駅を出ると、そこがご利益通りだ。せんべいや土産物など「仲見世」らしい店から、洋菓子や焼き肉など40店ほどが並ぶ。この参道の先に、不動堂がある。知れば知るほど楽しい寺だ。
受け身でいたら参拝者は来ない。来てもらうには……。「ニーズにどう応えるか」と不動堂の僧侶、樋口照喜さん(45)。本堂の後ろにそびえ建つ内仏殿の、無料拝観スペースが回答の一つだ。
「四国八十八ケ所巡拝所」。霊場88カ所の砂袋を踏んで歩くと、実際に巡ったのと同じとされる「お砂踏み」が、ここでは砂を透明の円筒に入れ、手でさわれるようにした。暗い室内でお年寄りが転ばないように、という配慮からだ。有料の写経道場は、朝から夕方までいつでもいい。掘りごたつ式なので、足がしびれたら伸ばせる。
面白い大仏があれば九州に赴き、サービスが人気と聞けばホテルにも出向く。5年前に内仏殿を建てる際には、法務や庶務など各部署の代表が、ざっくばらんに話し合った。「成田山の別院として伝えるべきものは伝える。ただ、方法は一つではない」と樋口さん。お札場で扱うアイテム約250というのもその表れだろう。「ペット&迷子お守り」(700円)は人気を集めている。
参拝者数の記録はないが、拝殿の時に靴を入れるポリ袋の発注は10年間で、約2倍の年20万枚に増えた。少子化でも、七五三の祈祷(きとう)申し込みは微増を保つ。さいたま市の若い夫妻は、「護摩も気軽に参加できるのがうれしい」と言い、子どものお初詣(はつまい)りもここでした。多摩市の主婦(44)は下町風情に引かれ、この日が2度目の参拝で、友達を連れてやって来た。
深川不動堂は、1703年、「江戸でご本尊を拝みたい」という江戸町民のリクエストで実現した出張開帳が始まりとされる。成田から300人もの行列が1週間かけてご本尊を運んだという。
「流れない水は腐ってしまう。だから水を流し続ける」と不動堂職員(41)。時代と人々のニーズを追い続ける。時が流れても、その心は変わらない。
(秋山幸子)