文化財指定され山車巡行
江戸時代の職人技をふんだんに盛り込んだ彫刻や刺繍(ししゅう)。見る者をくぎ付けにする絢爛(けんらん)豪華な山車が、笛や太鼓のおはやしにあわせて練り歩く、川越まつりの山車巡行。中でも蔵造りの商店が並ぶ「一番街通り」は、最も絵になるメーンストリートだ。のべ90万人も見物に訪れる中、山車のひき手も「晴れ晴れしい気持ちになる」という。
今年2月、この山車行事が国の重要無形民俗文化財に指定された。江戸時代初期、地元の氷川神社の氏子が始めた川越まつりは、伝統的なしきたりが多く、長い間、町内の者以外が山車をひくことは許されていなかった。
戦後は参加地域が広がり、地元の人以外にも門戸を開く町が出てくるようになった。市役所でも、02年から市内の小学6年生を対象に参加を呼びかけている。
年々盛り上がりをみせる祭りを文化財にしようと、地元では99年から取り組みを始めた。中心となったのが、当時、山車保有町内協議会、山車行事保存会などの会長を務めていた原正次さん(80)。同通りの陶器店「やまわ」に生まれ、「物心ついたときから山車を引いていた」という根っからの祭り好きだ。
「一番苦労したのは、すべり出しだね」と原さんは振り返る。文化財になれるのは27ある山車保有町の中でも、しきたりを守り、初期から参加し続けている13町だけだと分かった時だ。
「これまで祭りを支えてきた仲間にどう伝えたらいいか」。悩んだ末に原さんは、各町の代表者を集めて頭を下げた。「たとえ指定されるのが13町だけでも、祭り全部が文化財になったのだと考えてくれないか」
88年に山車を製作した脇田町の代表で、当時、協議会の副会長を務めていた土金博さん(79)は言う。「文化財に指定される山車は、他町から見ても一目おく存在だよ」
今年は例年より多い23台が練り歩く。原さんは、店の中から静かに見守るつもりだ。
(野戸昌希)