店の会話で作る住み良さ
夕食の買い物ついでに井戸端会議の主婦、通りを駆け抜けるランドセル姿の小学生。暗くなれば仕事帰りの人々が加わる。商店街の衰退が言われて久しいが、ここは人通りが多く活気がある。
「徒歩5分以内で生活に必要なものがそろう」とは会社員の女性(29)。戸越駅周辺の500メートルほどに八百屋が実に6軒。スーパーもあるが、40代の主婦は「今晩のおかずの相談もできるから」と、生鮮品は商店街で買う。
オリジナルブランドの開発やノーレジ袋運動など様々な取り組みを続けてきた街だが、「商店街の名物は店のオヤジ」と、戸越銀座商店街連合会会長で中国料理屋「百番」店主の白井宗光さん(74)は言う。
客との付き合いが長く、家族の近況や好き嫌いまで知っていることも。親子と顔見知りだからできることがあると、今年秋から始めたのが「こども110番」だ。独自のオレンジ色の旗を店頭に掲げ、何かあったら子どもが駆け込める拠点にした。
犯罪抑止効果もねらう。今年春、近くの公園で子どもが連れ去られそうになる危険な出来事もあった。小2男子の母親(39)は「見守る目が増えるのは安心」と言い、小学生の子がいる別の母親も「(店主の)おじさんは顔見知りなので子どもも助けを求めやすい」と子どもの安心感を評価する。「買い物の際の普通の会話が人間関係をつくり、安心して過ごせる街をつくる。そんな役割を果たせたら」と白井さんは言う。
4年前に開設したホームページ「戸越銀座ネット」は、各店舗の情報のほか、公共施設、近隣の社寺まで紹介する。立ち上げには、地元の大学生が奮闘した。商店主が指導する少年野球の教え子で気兼ねなく話せたことが、地域に役立つサイトにつながったという。
商店街では、今年度中にタッチパネル4台を設置する。外来者はもちろん、インターネットに不慣れな人にも街の情報が簡単に手に入るように。会話のきっかけが、また増えるかもしれない。
(石坂 亜子)