サラリーマン包む温かさ
絶妙な白い泡の生ビール。ぐいっとのどに流し込む。「あー、今日も1日お疲れさん!
これから、サラリーマンにとって「大事な時間」が始まる。
新橋西口通りは7割以上が酒の飲める飲食店。一昔前は、銀座の半額と言われ、今も3千円あれば楽しめる。
通りを入ってすぐ左、雑居ビルの地下にある「和風スナック忍」。午後9時過ぎ、演歌が緩やかに流れる小さな店内に2人連れの客が現れた。そのうちの1人、スーツ姿の50代男性は言う。「疲れていても、ここでは気兼ねしないでくつろげる。もうひとつの家みたいなもの」
店のママ、松村徳子さん(58)は言う。「新橋はいいよ。かっこつけなくていい。お客さんと本音で語り合える」。仕事帰り、この「家」にふらりとやってくる客を「待ってたよ」、そう迎える松村さんの姿に温かさがにじむ。
通勤途上でもないのに週2〜3回のペースで新橋に来てしまう。そんな会社員、伊佐龍寿さん(38)は、通りの奥にある「いいかげんや」の常連だ。
伊佐さんは、カウンターで隣に座った客に「おつかれさま!」と声をかける。仕事、政治、スポーツ……いろいろな話をして酒を飲み、笑いあう。と、そこへガラッと扉が開いて、また新しい「仲間」が入ってきた。「おう! おつかれさま!」。伊佐さんの声が響く。「つらい時もここで救われた。ここでの人とのつながりがあるから、毎日がんばれるんです」。伊佐さんは、3杯目のビールをおかわりした。
街のシンボルである駅前のSL広場が、来年3月末ごろ、きれいになって生まれ変わる。保水性ブロックを敷き詰め、都市熱の冷却効果もねらう。「汐留もいいけど、もっと若い人にも新橋に来て欲しい」。この改修事業にはそんな地元の人の思いも込められる。
午後11時、西口通り前。ほろ酔いサラリーマン3人組と出会う。「よし、明日も頑張るか」。ちどり足の彼らは駅へ向かった。
(熊坂麻美)