夢追い人支える飲食街
自動車の入りにくい細い通りには、古着屋に雑貨屋が所狭しと並ぶ。それがシモキタだ。
ところが、あずま通りは違う。物品販売の店がほとんどなく、あるのはぎっしり飲食店。演劇やライブが終わると、客の多くが吸い込まれていく。
本多劇場のチーフ、大岩正弘さん(46)が教えてくれた。「芝居後、観客が舞台にいた役者と飲み屋でばったり会うこともあるんです」
80年代前半に誕生した本多劇場は小劇場の先がけ的存在となる。少し遅れて現れた「屋根裏」は、ロックの登竜門となり、多くのバンドがここから世に出た。
彼らが通っていた店のひとつが、創業41年の中華料理店「a亭(みんてい)」。ボリュームたっぷりのラーメンが人気で、昼も夜も満席だ。2代目店主の鮎澤寛之さん(41)は「ギターなどを持って入ってくるお客さんは多いですよ」。店には役者を目指しながら、アルバイトをしている若者もいる。
四半世紀続く、焼き鳥屋「陣太鼓(づんでこ)」の「お父さん」、田口明さん(68)は「僕も『お母さん』も、音楽が好きでね。楽器を持っているお客さんを見つけると、つい話し込んじゃう」。
これらの店の一部は取り壊しの対象になっている。下北沢駅の前にロータリーや道路を造る計画が、8年後の完成に向け動き出したのだ。
あずま通りにも幅約20メートルの道路が横切ることになる。
「街の雰囲気を守りたい」と計画に反対する動きもある。が一方で、「今のままの細い道では災害にあった時に逃げられない」などと店主たちの意見はさまざまだ。
通りから少し離れた老舗(しにせ)ジャズバー「レディ・ジェーン」のオーナー・大木雄高さん(60)はこう話す。
「大きな道路がなくても、今まで何も起こらなかった。ちゃんと主人の顔が見えて、会話が出来る店がなくなってしまったら、ほかの街と変わらなくなっちゃうよ」
(坂本悠子)