変わる風情感じて歩く
数寄屋橋から築地方面へ、晴海通りを歩く。ブランド店の陳列窓を彩るのは、季節を先取りしたドレスやバッグ。平日の午後、通りは銀ブラ中のシニアカップルや買い物を楽しむ女性らが行き交い、歩調はゆったりとして優雅だ。「周りの人がみんなセレブに見えるわ」という声も聞こえてきた。ここには歩く人に魅力を与える、不思議な力があるのかも知れない。
銀座・中央通りと交わる4丁目の交差点。三越の前で待ち合わせをする西東京市の主婦、服部美佐子さん(53)は「市川染五郎に会いに行ってきたの」と笑顔を見せた。2カ月に1度、歌舞伎座で観劇を楽しむそうだ。「あの風格ある建物に入って行くと、気持ちが引き締まるの。他では味わえない感覚」と、言葉に力がこもる。
数回の建て替えを経て1951年に完成した現在の歌舞伎座は、02年、国の有形文化財に指定された。約20年間、売店で働く鈴木久美子さん(50)は、「華やかさと伝統の重みを兼ね備えた歌舞伎座は、他の劇場と比べて別格。売店のにぎわいも全然違うんです」と胸を張る。「昔からの雰囲気を大切にしている銀座も同じ。流行に左右されないから、いつまでもあこがれの街」と続けた。
そんな歌舞伎座もバリアフリーなどの観点から、建て替えの検討を始めた。50〜60年が建物の寿命だと言われる中、通り沿いで建て替えを進めるビルや区画も多い。再開発によって「銀座らしい」雰囲気、街並みが失われてしまうことを懸念した地元商店会組合などは、一昨年「銀座街づくり会議」を発足させた。
同会議で企画・運営を担当する竹沢えり子さん(46)は、「ブランド街、4丁目の交差点、歌舞伎座、築地。次第に変化する風情を歩きながら体感できるのが晴海通りの面白いところ」と言う。市場のある築地へ近付くにつれて食品問屋、すし屋などが増え始め「和」の雰囲気が漂う。この数年間で通りの景色も変わりつつあるが、竹沢さんは「歩く楽しみを感じられる通りであり続けてほしい」と願っている。
(嶋津智子)