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2006.2.2(木)更新 ストリートストーリー
 
本郷通り  (東京・文京区)

 喫茶店や古書店が軒を連ねて、アカデミックな雰囲気が漂う本郷。街や学生の変化をつぶさに見てきた、戦前からの商店も多い。時代の流れとともに、穏やかに暮らす人々の心には、学生を支える街ならではの優しさが息づく。

 
イラスト・久保庭華子
学問の街に息づく人情

 東大正門前で1914年に創業した万定フルーツパーラーは、「よく来る学生が、いつの間にか教授になっていた」ほど、長らく学生に親しまれてきた。ノーベル物理学賞を受賞した、小柴昌俊さん(79)の姿も見かけたという。

 昨年7月に2代目店主の外川甲二さんが亡くなったが、甲二さんが一から作り上げ、常連客に親しまれるカレーとハヤシの味を妻の喜美恵さん(68)が守る。「知識人や文豪が普通に道を歩いている。そういう人に接する機会があるのが、本郷の楽しさ。立派な人ほど気さくなんですよ」

 移転前は、劇作家の木下順二さん(91)ら常連の「指定席」があった喫茶ルオーも健在。ただ、中庭付きで120席もあった店は80年の移転時に小さくなった。グループで議論や勉強会をする学生が減ったためだ。周りにあった100席規模の喫茶店はほとんど閉店し、昨今は学生の好みを反映してか、喫茶店よりラーメン屋が目に付く。

 センター試験の前後、街はサクラ色の幟(のぼり)と照明に染まり、通りは「きっと、サクラサクストリート」になった。受験生の応援に近隣の商店が企画したという。

 本郷には受験生や学生を受け入れる賄い付き下宿が多かった。いまはワンルーム賃貸マンションに押され、51年前に創業した「暁秀館」のみが営業を続ける。高・大学生、受験生、留学生の計20人を抱える小竹妙子さん(81)は、コンビニ生活の今こそ、温かな白いご飯に汁物、おかずなどがそろった「本来あるべき姿の食事」を皆でとることにこだわる。「食卓を人と囲み、コミュニケーションをとることで、若い人は成長するんです」

 東大があり、神社仏閣があり、文人が多く居を構えた本郷。街の雰囲気を信頼し、「本郷の下宿だからこそ」子どもを預ける親の気持ちに応えたい、という思いも強い。

 昔も今も、学問を志す人の根本は変わらない、と言う。「今の若い人も捨てたもんじゃない。ほんの数年でも、そんな人たちの力になれたらうれしいんです」

 

(堀 雅子)

  東京大学を知ろう

 「開かれた大学」を目指す試みの一つが、赤門脇の東京大学コミュニケーションセンター(本郷三丁目駅、TEL03・5841・1039)。泡盛「御酒(うさき)」(720ミリリットル、4200円)や「光触媒シート」(2枚入り500円から)など、研究成果をいかした商品を販売。(日)(祝)休み。午前10時半〜午後6時半。
 学生が本郷キャンパスを案内するキャンパスツアー(2時間、無料)はホームページ(http://nw.nc.u-tokyo.ac.jp/campustour)からのみ参加受け付け。

菊坂文学散歩

 本郷通りから春日方面に抜ける菊坂には、文人ゆかりの史跡が多い。なかでも樋口一葉は24年の短い生涯の中、約10年間を本郷で過ごした。一葉旧居跡と井戸のある路地や、通ったという旧伊勢屋質店が残る。まるや肉店の「菊坂コロッケ」(1個90円)は散歩の友におすすめだ。個人の敷地内の史跡もあるので、見学の際はお静かに。


戦前の雰囲気味わえる
 川本三郎さん(評論家)
 本郷の大部分は戦争で焼けなかった。坂の多い地形も昔のまま。驚くほど古い木造下宿や徳田秋声旧宅など、町歩きを楽しむ要素が詰まっている。東大生だった頃は、授業に出るより周りの街をぶらぶらしていた方が多かったかな。喫茶店のカレーが有名ですが、当時の貧乏学生たちにとっては、高価な食べ物だったんですよ。
 ■44年生まれ。96年「荷風と東京」で第48回読売文学賞受賞。映画・文芸評論以外に、町歩きのエッセーも多数。  


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