「故郷で美味(おい)しいものは一にめはり、二にさんま」。和歌山県新宮市出身の詩人・作家の佐藤春夫(1892〜1964)はこう語っていたという。
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葉をかみ切ると、ぴりっと辛い高菜と、ご飯にしみこんだ甘いしょうゆだれの味がふんわり広がる。中には小さく刻んだ高菜の茎がぎっしり。
「めはりの食べ方で同郷人かどうかがわかる」。東京・築地の和歌山郷土料理店「熊野路」の店長西本克さん(39)は、佐藤春夫と同じ出身。地元では男性の拳ほどあるめはりずしを両手で持って豪快にかぶりつくが、初めてその大きさを見る客の中には、はしを使う人もいる。
まん丸に俵形。形も様々なら、中身や葉の味付けも家庭によって違う。「うちではカツオ節を混ぜていました」と、県東京事務所の堀順一郎さん(50)。最近は食べやすいように小さく握ったものも市販されている。
高菜の収穫は主に冬場だ。同店料理長丸山成身さん(45)の旧本宮町の家では、この時期高菜を塩漬けにしていた。「漬けたては青々としていますが、日がたつと黄色っぽくなってつーんと酸っぱいにおいがしました」
県南部出身の3人が囲んだ机上には、めはりずしと共に名物のサンマずしが並ぶ。祝いの席で食べるのがサンマずしなら、海山で手軽に食べるのがめはりずしだ。古くは、山仕事の合間、腹ごしらえの弁当として食べられていたという。
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ただの握り飯。だが、佐藤春夫は「野趣があつてなかなか馬鹿(ばか)にならない味である」と、著書「望郷の賦」の中で記している。3人も「素朴でくせがない。口にあわない日本人はまずいないでしょう」と、ふるさとの味をうまそうにほおばった。