懸賞サイトは朝日マリオン・コム-懸賞 プレゼント、懸賞 応募、懸賞 旅行
2006.4.26(水)更新  石原良純のあした天気に
石原良純のあした天気に
黄砂の降る街角
題字・イラスト  井沢洋二
 見上げた空が、黄色いチリに霞(かす)んでいた。18日に東京で黄砂が観測されたのは、2000年4月以来、6年ぶりのことだ。

 黄砂と聞いて僕がまず思い浮かべるのは、灼熱(しゃくねつ)の太陽の下、遥(はる)か地平線まで荒涼と続く砂の大地。三蔵法師も旅したであろうシルクロードの風景だ。

 砂嵐は、時にそそり立つ巨大な壁となり、砂の大海原を渡る旅人の行く手を阻む。いとも容易(たやす)く人の命を奪う暴風に、旅人が魔物の姿を見たのも頷(うなず)ける。

 砂じん嵐を天気記号で表すならば〈〉。中学生の僕は、ラジオの気象通報で<Eルムチでは南東の風、風力8、砂じん嵐……と聴いて、地面に伏せても目や口や耳、穴という穴に砂が入り込む惨状を想像したものだ。

 18年前の映画「敦煌」の撮影では、ロケ隊が砂嵐に苦労したと聞く。砂嵐は毎日、お昼過ぎにやって来る。だから、ロケ隊の撮影は早朝から午前、そして、砂嵐をやり過ごした午後遅くから日暮れまでの1日2回。その度に、1000人にも及ぶ現地エキストラ共々(ともども)、砂漠のロケ地から街まで、行ったり来たり、大切な時間を費やした。

 夜間、ぐっと冷え込んだ大地は、日中、春の強い日差しに暖められ上昇気流を引き起こし、やがて砂嵐を産む。大地が充分に暖められたほぼ同じ時間に、毎日、砂嵐はやって来るわけだ。

 砂漠を旅したことのない僕だが、オーストラリアのパースで、砂漠が引き起こす強い風に晒(さら)された。

 夏の日の午後、内陸部のグレートビクトリア砂漠は、インド洋から海風を引き寄せる。白い砂浜で寝転ぶ僕は、砂嵐のほんの触りに遭遇したわけだ。

 しかし今や、黄色い空を見上げ、砂漠の物語に想(おも)いを馳(は)せている場合じゃない。日本に舞い降りる黄砂は、残念ながら自然の営みとばかりは言っていられない。

 人間は森の木々を燃料とし、増えた家畜は草を喰(く)い荒らす。本来、緑の大地であるべき場所が砂漠となり、遥か彼方(かなた)の島国まで砂をまき散らす現実となる。

 空に垣根はない。地球にたった一つの空。壊すも守るも僕ら人間にかかっている。

いしはら・よしずみ 俳優・気象予報士。62年神奈川生まれ。84年デビュー。舞台、映画、テレビで活躍中。97年気象予報士に。「FNNスーパーニュース」でお天気キャスターを担当。

(2006年4月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 朝日マリオン・コムとは | 姉妹メディア | 会員規約 | 個人情報・著作権
  asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2006 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.