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題字・イラスト 井沢洋二
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5月18日、桜前線がようやく日本の最北端・稚内に到着した。
稚内港の大防波堤を見下ろす稚内公園に咲く桜は、ソメイヨシノに比べて花びらのピンクが強く、葉の色が赤いエゾヤマザクラ。
ソメイヨシノの育たない道北・道東では、桜前線はエゾヤマザクラが代わりを務めるのだ。
春の日差しを受けて咲き誇る北の桜。だがその光景は、どこか寒々しい。宗谷海峡の海風はまだまだ冷たく、稚内の5月の気温は東京の3月ほどでしかない。
桜前線は、3月15日に南国・高知に上陸。3月後半のポカポカ陽気で一気に北上し、21日には東京でも開花した。
しかし、東京の桜が見頃となる頃から気温の上がらぬ日が続き、桜前線がみちのく東北路を進む速度はぐっと落ち込んだ。
その後も4月は晴れの日が続かない。桜前線はほぼ1週間遅れで青森に到着し、津軽海峡を渡り道内を進む。それでも、この数日間の好天気のおかげで平年より2日遅れで稚内にゴールを切った。
2カ月かけて日本列島を縦断した桜前線。そんな桜前線を眺めれば、日本列島の春の天気を振り返ることになる。
ようやく稚内に到着した桜前線と同様に、僕にも苦心惨憺(くしんさんたん)して、稚内に到着した思い出がある。
あるドラマの稚内ロケでのこと。スケジュールの都合上、僕は前の仕事のロケ先から稚内に飛び込まなくてはならなくなった。
僕がいたのは南米・アルゼンチン。首都ブエノスアイレスからブラジル・サンパウロ、アメリカ・ロサンゼルスを経由して成田まで約25時間のフライト。さらに羽田から千歳へ飛び、札幌から寝台急行「利尻」で稚内を目指した。
3泊3日の乗り物移動より辛(つら)かったのが、お腹の具合だ。
ブエノスアイレスの最後の晩、タンゴクラブに出かけた僕は、初めて見る生タンゴショーに見とれて、うかつにも水割りを飲んでしまったのだ。
それこそ≠との祭り。水あたりした僕は、飛行機でも電車でもピーヒャラ、ピーヒャラ……。
あっ、そんな僕を桜前線といっしょにしてゴメンなさい。