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題字・イラスト 井沢洋二
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ツッと小さな雨粒が鼻先を掠(かす)める。
ユラユラ、ユラユラ。見上げた灰色の空を細かい雨がのんびりと落ちてくる。
ポツポツ、ポツポツ。アスファルトの路面にはじけると小さな水玉模様を描きはじめる。
梅雨時の雨は、梅雨前線の気分次第だ。前線が南北に少し上下するごとに、下界では雨が降ったりやんだりを繰り返す。
雨が降り出す間際、街には一瞬の静寂が訪れる。そよ風に揺らいでいた木々はピタリと動きを止め、近くを走り抜けるバイクの音がやたらと大きく聞こえたりする。それはきっと、雲が仕事をはじめる前に、一つ深呼吸して、息を止めた瞬間に違いない。
パラパラ、パラパラ。雨粒が新緑の葉を揺らす。けれども今を盛りに生い茂る若葉は、か細い梅雨時の雨粒などに負けてはいない。ピッと背筋を正して降りかかる雨粒をたちどころに振り払う。
シトシト、シトシト。ゆっくり髪の毛を濡(ぬ)らすほどの雨ならば、僕は傘など持たない。少し歩幅を広げ目的地を目指す。
湿った空気が身にまとわりついて、肌にじんわりと汗が滲(にじ)んでくる。汗と細かい雨が肌の上で混ざり合い、体が薄い膜に包まれて頬(ほお)がなんだか火照ってくる。梅雨時の歩行者は往々にして熱い体で歩いていたりするものだ。
ならば、しばし歩みを止めて雨宿り。
スーッ、ポタ。スーッ、ポタ。軒先に雨の雫(しずく)が集まって大きくなった水滴は、やがて重力に耐えかねてポタリと地面に垂れてゆく。
ツッツッ、ツッツッ。電線では、4粒の雫が鬼ごっこをしている。電線を伝わる雫に、後ろの雫がぶつかって。そのまた後ろの雫がぶつかって。そして、そのまた後ろの雫がぶつかるとゲームオーバー。4粒分の大きな雫はポタリと地面に落ちて、王冠模様の飛沫(しぶき)を上げると跡形なく消し飛ぶ。
♪ピッチ、ピッチ、チャップ、チャップ、ランランラン♪
子供の僕らは、誰もが街中にあふれる雨の音を楽しんでいたに違いない。雨の季節こそ、懐かしの雨の音をいま一度楽しんでみては。