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2006.6.28(水)更新  石原良純のあした天気に
石原良純のあした天気に
雨、雨、降れ、降れ
題字・イラスト  井沢洋二
 ツッと小さな雨粒が鼻先を掠(かす)める。

 ユラユラ、ユラユラ。見上げた灰色の空を細かい雨がのんびりと落ちてくる。

 ポツポツ、ポツポツ。アスファルトの路面にはじけると小さな水玉模様を描きはじめる。

 梅雨時の雨は、梅雨前線の気分次第だ。前線が南北に少し上下するごとに、下界では雨が降ったりやんだりを繰り返す。

 雨が降り出す間際、街には一瞬の静寂が訪れる。そよ風に揺らいでいた木々はピタリと動きを止め、近くを走り抜けるバイクの音がやたらと大きく聞こえたりする。それはきっと、雲が仕事をはじめる前に、一つ深呼吸して、息を止めた瞬間に違いない。

 パラパラ、パラパラ。雨粒が新緑の葉を揺らす。けれども今を盛りに生い茂る若葉は、か細い梅雨時の雨粒などに負けてはいない。ピッと背筋を正して降りかかる雨粒をたちどころに振り払う。

 シトシト、シトシト。ゆっくり髪の毛を濡(ぬ)らすほどの雨ならば、僕は傘など持たない。少し歩幅を広げ目的地を目指す。

 湿った空気が身にまとわりついて、肌にじんわりと汗が滲(にじ)んでくる。汗と細かい雨が肌の上で混ざり合い、体が薄い膜に包まれて頬(ほお)がなんだか火照ってくる。梅雨時の歩行者は往々にして熱い体で歩いていたりするものだ。

 ならば、しばし歩みを止めて雨宿り。

 スーッ、ポタ。スーッ、ポタ。軒先に雨の雫(しずく)が集まって大きくなった水滴は、やがて重力に耐えかねてポタリと地面に垂れてゆく。

 ツッツッ、ツッツッ。電線では、4粒の雫が鬼ごっこをしている。電線を伝わる雫に、後ろの雫がぶつかって。そのまた後ろの雫がぶつかって。そして、そのまた後ろの雫がぶつかるとゲームオーバー。4粒分の大きな雫はポタリと地面に落ちて、王冠模様の飛沫(しぶき)を上げると跡形なく消し飛ぶ。

 ♪ピッチ、ピッチ、チャップ、チャップ、ランランラン♪

 子供の僕らは、誰もが街中にあふれる雨の音を楽しんでいたに違いない。雨の季節こそ、懐かしの雨の音をいま一度楽しんでみては。

いしはら・よしずみ 俳優・気象予報士。62年神奈川生まれ。84年デビュー。舞台、映画、テレビで活躍中。97年気象予報士に。「FNNスーパーニュース」でお天気キャスターを担当。

(2006年6月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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