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題字・イラスト 井沢洋二
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変身台風12号は、5メートルの大波を太平洋沿岸にうちつけ、日本列島から遠のいていった。
&マ身台風は気象用語ではなく、ニュースの中で生まれた造語だ。ハリケーンIOKE(イオケ)が経度180度線を踏み越えて、台風12号と名前が変わったのだ。
南の海の嵐は生まれた場所ではなく、現在地点で呼び名が決まる。太平洋の経度180度線の西にあれば台風、東にあればハリケーン。大西洋にあるものもハリケーン。そして、インド洋で暴れるのがサイクロン。
1951年の統計開始以来、180度線を超えてハリケーンが台風になったのは16個目。そのうち三つはブーメランのように再び180度線を跨(また)ぎハリケーンとなっている。
正確を期すれば、16個すべてがハリケーンから台風に変わったわけではない。風速17・2メートル以上の熱帯低気圧を日本では台風と呼ぶ。アメリカでは風速32・6メートルを境に、トロピカルストームと、より強力なハリケーンの2段階に分類している。16個の中には、トロピカルストームから台風に変わったものも含まれているわけだ。
また、平均風速は日本が10分間の平均値なのに対し、アメリカでは1分間の観測値から算出される。ハリケーンの方が台風より強力だとイメージされているのは、このせいだろう。
日本では台風になり損ねた雲の塊を、℃繧「熱帯低気圧と呼んでいた時期がある。℃繧「と聞けば人間は油断する。そんな油断が1999年の玄倉川遭難事故の一因となった。以来、気象庁は気象情報の発表に、弱いとか小型とかネガティブな表現を一掃した。
人間が勝手に決めた180度線とか、風速を基準にした改名は、強大な雲の渦にとっては、あずかり知らぬこと。強大な自然エネルギーを前に、僕らはもっと謙虚であるべきだ。
テレビが台風の接近を告げる朝、空の低いところを怪しげに走る黒雲や湿気を孕(はら)んだ生温かい風に、「やばい」とか「怖い」という気持ちを忘れてはならない。
そんな朝、僕は家から、出ないもんね。