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題字・イラスト 井沢洋二
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南北に横たわる羽田空港のA、C滑走路。飛行機がディズニーランドを掠(かす)め、大きく左旋回して着陸する時は、南よりの風。東京湾に浮かぶ人工島・海ほたるの頭越しに着陸する時は、北よりの風。
今の時期、東京の風向きは大きく変わり、夏の南風に代わって、秋は北風の吹くことが多くなる。轟音(ごうおん)を立てて舞い降りるジェット機からも、季節の移り変わりは読み取れる。
照りつける日差しには、まだまだ肌を焦がす強さがあるが、秋の日中に頬(ほお)を撫(な)でる風には、夏の湿ったそれとは明らかに違う爽(さわ)やかさを感じる。秋の到来を告げる涼しい風は、「初秋風」とか、「秋の初風」と呼ばれている。
しかし秋風は、そんなに生やさしいものばかりではない。強風に倒された山野の樹木を平安貴族が詠んだ「野分(のわき)」は、秋の季語。明治以降に英語の「タイフーン」を訳した「台風」も、秋の風だ。
台風の強大な雲の塊の中で、時には積乱雲が猛烈に発達する。そんな雲の下では、大雨、雹(ひょう)、雷はもちろん、突風が吹き荒れる。
先日の台風13号では、宮崎・延岡市を竜巻が襲い、特急列車を転覆させたのは記憶に新しい。
「青げたならい」は、伊豆大島や静岡の言葉。秋晴れの空の下を吹き抜けるならい(強い北東風)のこと。「鷹風」は、遥(はる)か天高く鷹を舞い上げる風のこと。どちらも、真っ青な空を容易に連想させてくれる。
「萩の風」は、萩の葉を揺らし、「芋嵐(いもあらし)」は、里芋の葉を揺らし、「鮭颪(さけおろし)」は、鮭の遡上(そじょう)を知らせ、「雁渡(かりわたし)」は、風に雁を乗せて吹き寄せる。
秋に吹く風一つをとってみても、その土地、その土地の暮らしに根付いた呼び名が無数にある。それは、日本の自然がいかに豊かであるかの証しだ。
空の一番高いところを、どんどん鰯雲(いわしぐも)が流れてゆく。秋は、日本列島の遥か上空にジェットストリームが現れる季節でもあるのだ。
どんどん、どんどん。なるほど、雲の流れが魚の大群に見えてきた。
秋こそ、空を見上げるのに最もふさわしい季節に違いない。一日に一度、空を見よう。
=おわり