デビューして1年ぐらいした20代前半頃、猛烈に忙しい時期があった。移動、移動で寝る時間が少なく、肌も荒れていた。「あー、お化粧して現場に入りたい! こんな素顔、人前にさらしたくない」。そう思うと、いつも憂鬱(ゆううつ)であった。
私の仕事の現場には必ずヘアメークさんがつく。すぐメークに入れるように、スッピンで行かなければならない。あいさつし、衣装合わせをする時間が恥ずかしい。メークが始まると「肌が荒れていてすみません」といつもペッコリ頭を下げた。「大丈夫、大丈夫。キレイにしてあげるから」と心強い言葉をかけてもらうことが多かった。
しかしあるとき、ひとりのヘアメークさんに「それはなぜですか?」と聞かれた。えっ? そんなこと聞くの?! えっと、えーと。「あまり寝られてなくて……。食べ物もあまりいい物を食べてないからですかね……。エヘヘ」
この時まで、半ば自分だけのせいではないと思っていた。それからというもの、タッパーに茹でたブロッコリーやアスパラガス、あまり好きではないニンジンを持参し、時間があるときは五穀米をおにぎりにした。必死だった。いつの頃からか、肌荒れがなくなっていた。私にとって奇跡のようだった。−−ああ、あんな思いはもう嫌じゃ。私は今、野菜をモリモリ食べている。