短大時代、家政科が前身だった科に在籍していた私は、調理実習が必須科目だった。シーフードパエリアやエビのチリソース、ホワイトシチューなど、家庭で一から作るには難しい、面倒だと思われている献立が、思いの外ささっと作れることを知った。
この授業は興味深かったが、楽しいものではなかった。なんせ教授が怖かった。授業が始まる前はみな、教室に走り込んでいた。始まるとまず、先週作った料理の話をし、毎回提出するリポートの模範的なものと、不出来なものを見せながら話をした。そんな中で「この授業で習った料理を家でも作った人なんていないでしょうけど、まあ聞いてみましょうか」と言われても、優等生を気取っているようで手を挙げられなかった。でもほぼ毎回、忘れないようにその夜作っていた。自分のものになるまで、家族を付き合わせた。
教授のレシピは本当においしかった。教えてもらってからは、簡単に出来る市販の物を使わなくなった。しかし、料理というのはしばらくしないと腕が落ちる。社会人になって1、2年の間、親元にいてほとんど料理をしなかったら、あの頃ウンザリされるほど作ったものさえ、しっくりいかなくなっていた。実習で使っていたノートを探してみたけれど、見つからなかった。
また怒られてもいい。あのレシピ、もう一度教えて下さい。