「キミは欲深いからな」と旦那(だんな)が言った。なんかイヤな言葉。聞き捨てならない。強欲ってことなのか……。「いや、僕もだからよくわかるんだけど。ほらあの時だってそうだったじゃない?」とホローするような口調。あの時というのは、お休みの日のことだ。
今夜は外食にしよう、と商店街をとりあえず歩いていた。おなかが空いてるのに、なかなかお店が決まらない。最初に話していた、さっぱり系のお店で……というのはどこへやら、焼き肉屋の前を通れば焼き肉、天ぷら屋の前を通れば天ぷらもいいな、と思う。結局商店街を2周し、もうどこかへ入ろう、ということになった。店構えは悪くない。「きっとここいいよ」と言い出した私に対し、旦那は疑いの目をしている。「わかった! 入ってみて少し頼んでみて、あっ、違うなって思ったら目配せしよう。それで出ちゃえばいいじゃない?」。そう説得し、中に入る。
流行(はや)ってないお店独特の空気が漂う。とりあえず、注文をする。目配せだけでは意思の疎通が取り難い。どちらから始めたのか、腹話術人形のように会話する。時々何を言っているのかわからないけれど、「次の1杯で出ようね」というのはよくわかった。
結局その日は焼き肉屋に行った。何か言いたそうな旦那に、「ここは奥さんのオゴリですから」と言って、旦那の機嫌も、私の欲深い食欲もなんとかおさめたのだった。