食いしん坊二人組にはお店選びに共通の基準がある。ひとりはもちろん私で、もうひとりは私の十年来のマネジャーである。(以下くうちゃん)
何食ともにしているか数えたら恐ろしそうだが、今に至るまでいいお店はくうちゃんに教えてもらったと思っている。例えばイタリアン。サーブする人に私たちはうるさい。メニューの提案が上手だったり、ちょっとした気配りがあったりすると気分がよい。これがへんてこだと「いけすかない」とくうちゃんの毒舌が飛ぶ。本当に不思議、と思うのだけれどファーストインプレッションって割と外れないように、この時の印象がお店を出るときに好転することはないのだ。姿を見せることはないかもしれない料理人の姿勢と一致する、ということをしみじみ思う。
また、寿司屋の場合。イタリアンとは対照的に板さんは目の前だ。偏屈は困るが、無口で頑固なぐらいの方が心地よい。ただ「出てくるもので感じてください」と言っているような。私たちは話し好きな板さんがいるお店で「当たった」ことがいまだない。お客さんと対話しているようでいて、オーダーが通っていなかったりする。寡黙で、気配を感じさせない板さんほど、良いタイミングで次の提案をしてくれる。
どんなお料理でも「いいお店」って見えていないところに神髄があるのかも、というのが私たちの見解である。