所属事務所の社長からお手製の生ハムをもらった。「生ハムを社長が!?」。私はもちろん、預かってきたマネジャーも驚いている。
芸能プロダクションの社長というイメージからは程遠く、菜園で育てた野菜を「摘みたてだよ〜」と言って、スタッフや私に袋いっぱいもたせるような人。数年前から、週末は山奥に住みかを構えるようになった。そこでは自分たちで壁を塗り、住みながら作っているような楽しそうな暮らしぶり。陶芸窯まで作ってしまったらしい。そして今度は、生ハム。
「一応女優さんですから、ハムの外っ側から食べてと伝えて。なんともなかったら中っ側もどうぞ」――と。社長にはたくましく育てられたが、さすがに「生ハムって豚肉じゃない……。素人が作っていいものなんだ(失礼!)」と正直思ってしまった。
その晩言われた通り、バームクーヘンを一枚ずつはがすように外っ側を少しずつ切り取り、つまんでみた。「うん、たぶん大丈夫」。そんな作業を繰り返しているうちに真ん中が見たくなり、真っ二つに切ってみた。400グラムはありそうな生ハムはレアとかそんな表現では収まらない、生肉であった。「えーい、明日倒れてもアタシのせいじゃないもんね」。大きめにパクッと口に運んだ。
結局、なにも起こらなかった。不死身の私? 「いや社長、今度は堂々と塩も控えめにして、自信を持って作ってみては〜?」と偉そうに報告する私であった。(女優)