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2008.3.11(火)更新  井川遥のてんや椀や/おかずしかいらない


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おかずしかいらない

 ごはんを食べ終えるまでテレビの部屋に行ってはいけません−−。それが我が家のルールだった。食べ終えた家族がテーブルからひとりふたりと、居間に流れていく。私はいつもビリだった。別に末っ子だったからでも、食が細かったからでもない。

 かなりのおかず食い。ご飯粒に全く興味がなかった。から揚げなんかが出た日は父か私か、いつも本数を競っていたぐらいなのだから。だから毎晩、目の前のおかずに目がキラキラ、おなかが膨れてくると手付かずのご飯茶碗(ぢゃわん)を眺め、口数が少なくなっていった。

 しかし母はそれを許してくれなかった。「ご飯粒も食べなさい。お百姓さんが汗水流して作ったお米を、1粒だって無駄にしてはいけません」。この母の言葉にも聞き飽き、ふざけて復唱してしまった時には、「わかっているなら食べなさいっ!」と余計に怒られるのであった。

 しかも大嫌いだったジャコとピーマンの炒(いた)めものを容赦なくご飯の上に振りかけられ、私は憤慨するのであった。ひと口ふた口、いつも頑張ってみるのだが、なんせおかずが満タンに入っているので限界である。そして最後は決まって麦茶がけご飯になる。何度もウップ、ウップとなりながら毎晩同じ流れをたどっていた。

 そんなふうにご飯もおかずもフルコース食べて育った私は、小学6年生にして身長が160センチ近くもあったのである。

井川遥のてんや椀や

(2008年3月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)


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